一戸総太選手 試合直前インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2015/04/17

2015年4月19日(日)にディファ有明で行われます「WPMF JAPAN × REBELS.35」にて、ルンピニースタジアム認定スーパーバンタム級タイトルマッチ3分5回戦を行います、一戸総太選手のインタビューを公開させていただきます。

自分の未来のために闘う

いよいよ、『WPMF JAPAN×REBELS.35』(4月19日・ディファ有明)で、ナッタポン・ナーチュアウィッタヤコム(タイ)が保持するルンピニースタジアム認定スーパーバンタム級王座に挑戦することになった一戸総太(WSRフェアテックスジム)。
やるべきことは全てやった。
一戸は「自分の未来のために闘う」と静かな闘志を燃やす。
聞き手・構成・写真:布施 鋼治

──2013年11月以来、2度目の挑戦。
正式に決まった時の心境は?

一戸 まあずっとチャンスをうかがっていたので、「ヨッシャ!」というのはないですね。
来たという感じ。
2年前に負けてからまた挑戦できるように、自分からチャンスを作りに行っていました。
タイミング的にも、これくらいかなと思います。
ルンピニーの王座挑戦はお金がかかることですし。

──先程ウィラサクレック会長との練習を見せてもらいましたが、ミットを持つ会長も熱が入っていましたね。

一戸 以前から会長は「日本でもタイで通用する選手を育てるんだ」と宣言しているので、なんとしてもそれを実現させてあげたい。
「やっぱりタイに行かないと無理」ということになったら、日本でムエタイをやっている選手たちのやる気がなくなってしまうでしょう。
みんなK-1に行ってしまいますよ。
でも、ムエタイの一流でK-1やボクシングに行っても優勝したり、世界チャンピオンになったりするじゃないですか。
ムエタイは恐ろしく奥が深いと思いますね。

──前回はルンペット・ガイヤーンハーダオに挑戦して判定負け。
あの時は何が足りなかったと思いますか?

一戸 ムエタイのルールを把握してきれていなかった。
闘い方がまだ日本のスタイルだったことに尽きますね。

──一口にムエタイといっても、タイと日本では判定基準が異なる。

一戸 僕がやっているのもムエタイだけど、幼少の頃からムエタイをやっているタイ人に同じムエタイで挑んでも絶対勝てない。
俺なんかまだ10年しかやっていないですからね。
まだ40戦もやっていないひよっこですよ(苦笑)。

──ひよっこと来ましたか。

一戸 僕がやっているのは和製ムエタイ。
前回は純ムエタイのポイントのとり方が不十分だったと思う。

──ルンピニーやラジャのタイトルマッチはレフェリーもジャッジも原則として現地のタイ人が裁きますからね。
それでも、頭では純ムエタイを理解していたと思います。

一戸 いざ闘ってみると、違いましたね。
やっぱりこっちから行こうとすると(前蹴りなどで)止められる。
やっぱりタイ人は試合の運び方がうまい。
ルンペット戦では相手の術中にハマッてしまったような感じがします。
途中で試合の流れを切り換えることもできなかった。

──いわゆるヒジなしのルールは打ち合い上等の世界じゃないですか。
それと比べると、全く正反対の世界ですよね。
こっちが打ち合いに挑んでも、向こうは付き合おうとしない。

一戸 そうなんですよ。
ジャンケンに例えるとムエタイでは相手がパーを出してきたら、こっちはチョキを出さないといけない。
前回は相手がグーの時にじゃあこっちもグーでという気持ちで押し切ろうとしている自分がいました。
タイ人はグーチョキパーをうまく使い分けていますよ。

──ユニークな例えですね。
タイ人は”あいこ”はしないというわけですね。

一戸 しないですね。
ヒジなしはそういう闘い方が喜ばれるじゃないですか。
ガチガチに打ち合って、ちょっとでも押し切った方が勝ち。
でも、ムエタイはそうじゃない。
だから難しい。
一流のタイ人って対戦相手によってファイトスタイルが全然違う。
AとBという対戦相手がいるとしたら、戦法を使い分けてくる。

──ムエタイは勝利至上主義の世界だとよく言われます。

一戸 実際にそうですよ。
勝てばいいと思ってやっていますから。
日本は人気のある選手だったら、負けてもいい試合をすれば人気は下がらない。
まわりも「負けたけど、いい試合だったよ。次、頑張ればいいよ」と労ってくれる。
でも、タイでは勝たないと次はない。
たぶん彼らは、そういう価値観をすり込まれて育っていくんでしょうね。

──その部分の埋め合わせはできましたか?

一戸 ハイ。
スパーはほぼタイ人選手とやって一発当たったら押し切るんじゃなく、その直後の返しをもらわないように務めています。
日本人選手を相手にスパーをやると打ち合ったり、「オラ~ッ!」という感じで力で勝負しようとするけど、最近はそういう気持ちを押さえる練習もしています。
チャンスが来ても、気持ちを押さえて押し切らない。

──行きたくても、あえてこらえる、と。

一戸 倒せばムエタイでも勝ちだけど、もしパンチを打ちにいった時に返しの蹴りを軽くでもパチーンともらったら、そっちがポイントになってしまう。
それがムエタイ。
「ウワァ~ッ」と行くにしろ、その後のディフェンスもちゃんと考えないようにしないといけない。

──闘いながらも、客観的に試合全体を見渡せる”もうひとりの自分”を置くようにしているわけですね。

一戸 そうです。
今回は倒すことは考えていません。
チャンスがあれば行きますけど。

──王者ナッタポンの印象は?

一戸 イケメンでうまい選手だと思います。
ただ、試合はおそろしくつまらない。
藤原あらし選手との一戦も見たけど、相手に合わせて水のように闘っていましたね。

──水の流れのように。
そうやって最終的には自分の方が試合に流れをたぐりよせると。

一戸 勝ち逃げスタイルですよね。
パチーンと打ったと思ったらすぐに下がってポイントをモノにする。
あの感覚はわかりますね。
相手はどんどん焦ってしまいますよ。
こっちが攻めれば攻めるほど、ポイントをとられるわけですからね。
クソッと思ってまた攻めようと思うと、またパチーンとミドルを打たれる。

──だったら、試合中に焦ったりすることは厳禁ですね。

一戸 むしろナッタポンを前に来させるくらいの感じで闘いたい。

──4Rまでにポイントをとられたら逆転は至難の業です。

一戸 相手がディフェンス9割の時って、こっちの攻撃は全然当たらない。
やっぱり日本人選手とは違いますよ。
この間久しぶりに日本人キックボクサー(宮元啓介)と闘ったけど、全然負ける気はしなかった。

──途中でカッカッした宮元選手がどんどん前に出てくるシーンが印象的でした。

一戸 あれは作戦通り。
あえて抑えていました。
ボディ攻撃は効いたけど、想定内だったので大丈夫でした。
「もしダウンを奪われたら・・・」「もし足が効いてしまったら・・・」と最悪の状況も一通り考えたうえで試合をしていましたからね。

──今回も行ける場合、ヤバい場合、最悪な場合など、全ての攻防をシミュレーションしている?

一戸 そうしています。3~4Rになって圧倒的に不利な状況に追い込まれていたら、もうガムシャラに行くしかないでしょう。
何でもいいから当てて倒すしかない。
こっちが挑戦する立場なので、ドローも意味はない。
今回が最後のチャンスだと思っているので、内容はどうであれ、勝ちにこだわらないといけない。

──最後のチャンス?

一戸 今年29歳になる。
もうルンピニーの王者になるのは一生無理かなと思って第二の人生を考えてたら、30歳でのスタートがギリギリだと思う。
だから今回獲るか否かで僕の人生は大きく変わってくる。
自分の未来のために闘いますよ。

──この日は梅野源治選手もルンピニー王座に挑戦します。
意識する部分は?

一戸 試合は自分の方が先なので、僕が先にとりたい。
まあ、ふたり揃って獲れたら一番いいですけどね。

プロフィール
一戸 総太(いちのへ そうた)
所  属:ウィラサクレック・フェアテックスジム
生年月日:1986年12月14日
出  身:青森県北津軽郡鶴田町
身  長:165cm
タイトル:WPMF世界スーパーバンタム級王者
通算戦績:37戦22勝(14KO)8敗7分 ※取材当時

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