REBELSオフィシャル 浜本“キャット”雄大インタビュー

インタビュー

公開日:2017/12/20

文・撮影:茂田浩司

「笑う人は笑っていればいい。僕はREBELSとラウェイの誇りを背負い、天心選手を倒します」



 RIZINキックボクシングトーナメント(12月31日、さいたまスーパーアリーナ)の1回戦で「神童」那須川天心と対戦する浜本“キャット”雄大(クロスポイント大泉)。
 世間的にはまったく無名の存在ながら、REBELSの山口元気代表は、浜本“キャット”雄大を自信を持ってRIZINのリングに送り込んだ。

「相手はあの天心君ですけど、キャットは天心君に勝てる可能性を持ってると思います。体が強くて、ディフェンス技術が高く、クロスポイント大泉の外智博会長に預けてから打ち合って勝てる気持ちの強さも身につけた。何より、本人が昔から『天心とやりたい、天心とやりたい』と言い続けてましたから。モチベーションがもの凄く高いですよ」

 天心戦が発表されると、さっそくネット上では「浜本キャットって誰?」「ラウェイ王者というけど1勝しかしてないじゃないか」等々、キャットの実力を疑問視する声があふれたが、キャット自身は全く意に介さない。

「新しいことをしようとすれば、みんな笑って『こんなの出来ないよ』と言う。だけど、僕はみんながやりたがらない相手、やりたがらない試合に勝ってきて今がある。僕には天心選手を倒せる可能性があるし、倒す自信もあります」

 この強い自信はどこから来るのか。
 浜本“キャット”雄大と、マンツーマンでキャットを鍛え上げた外智博会長に、東京・大泉学園駅そばのクロスポイント大泉でインタビューした。






明大キックボクシング部のガチスパーで、生き残るためにディフェンス技術を磨いた。



 浜本“キャット”雄大、1990年2月14日、東京都出身。
 中学は「テニスの王子様が流行ってたから」ソフトテニス部に入部するもグラウンドが狭く、2年生まで球拾いと聞いて「意味がない、と思って辞めて帰宅部です」。
 高校では野球部に入ったが「毎日練習に行くのが耐えられなくて、週1で行ってたらほぼ勘当みたいな感じで怒られて(苦笑)。背番号が欲しくて高3は真面目に練習して背番号を貰いました。だから本格的な運動経験はほとんどありません」

 明治大学付属明治高校から明治大学政治経済学部経済学科に進学し、友人から「ダイエット目的でやらない?」と誘われてキックボクシング部に入部。これがキャットの人生の転機となる。
「初日で楽しくなっちゃって(笑)。その日から『最強への道』という日記を付け始めて、格闘技オタクだったんで『構えは武田幸三、戦い方はキシェンコ』とか、自分の理想的なファイター像を書いたり『今日はこういうことをやった』とその日の練習内容を書いておくんです。これは今も続けています」

 練習は厳しいものだった。20人が入部し、最終的に残ったのはキャット一人だった。
「上級生が体の大きな先輩ばかりで、その人たちとガチスパーなんです。だからみんなすぐに強くなりますけど『恐い』って辞めちゃうんです。
 僕は、毎日、毎秒『どうやって生き抜くか?』を考えながら、多少貰っても倒れないぐらいタフだったんで、先輩たちの攻撃に耐えているうちにディフェンスの技術だけがどんどん上達していきました」

 キャットは体が強く、ほとんど怪我をしない。その理由をキャット自身はこう分析している。
「親の教育のおかげだと思います。僕、生まれてからまだカップラーメンを食べたことがなくて、冷凍食品も体が出来るまではダメ、コーヒーとかのカフェイン類もそんなに飲んだらダメ、と食生活には相当気をつかって育てられたんですよ」
 まるでジュニアアスリートを育てる食事だが、実際のキャットは何か習い事をさせられるわけでもなかった。そこは「浜本家」独特の教育方針があった。
「僕が何かをやりたいといえばやらせたけど、何もやりたいことがなかったから、と。ウチの家庭の思考は『とりあえずいい大学に行け、とりあえず勉強しろ、とりあえずいい企業に入れ。そうすればやりたいことができた時につぶしが効く』。僕が明治に入ったのも、運動したいと思えばやれるし、いい企業にも頑張れば入れるかもしれないし。で、僕は卒業してそのまま大手の会社に入ったんですけど、それも将来転職したくなっても大手なら転職しやすいだろう、と考えたからです」






2017年はラウェイ、ダウサコン、KOUMA
「誰もやりたがらない試合」に挑み、実力を伸ばした



 現在27歳のキャット。サラリーマンとファイターの「二刀流」の生活を6年間続けている。
 毎朝7時40分に起きて、家を8時半に出て、会社は5時半が定時で6時には出て、そのままジムに直行。2、3時間練習して帰宅。土曜日はプロ選手の多いクロスポイント吉祥寺に出稽古に行く。
「週6で練習ができてて、今、すごくいい環境で充実しています。『専業でやれば?』と言われるんですけど、今の環境が一番いいです。専業だとメンタルの逃げ場が無くなってしまうので。
 専業の人をディスるわけじゃないですけど、プロ選手を見てると、試合が流れたり、自分が怪我をした時にストレスを持ち過ぎてる。あと、対戦相手選びですよね。負けたらダメだから『この相手は嫌です』とか、強くなって、名前が売れてくればくるほど選り好みするようになってしまう。それではダメだと思うんで。僕はどんどん挑戦したいんですよ」

 キャットは2010年にプロデビュー。戦績は悪くなかったが、選手としての評価は高いとは言えなかった。

 山口代表「厳しいことを言えば自己満足の試合ですよ。『ほら、僕のディフェンス、上手いでしょ?』と。いやいや、お客さんは君のディフェンス技術を観に来てるわけじゃないから」

「僕は攻める癖があまりなくて(苦笑)。デビュー戦の時、自分よりも弱い相手とやるのは初めてで、全部の攻撃をさばき切って、カウンターを合わせて効かせた時、僕は攻め方が分からなかったんです。『なんで相手は下がるんだろう? 下がった相手はどう攻めるんだっけ?』と。でも、それはいい部分もあって、僕は攻めている時も、行き過ぎて相手にカウンターを合わされることはほぼないです。攻撃中も常にディフェンスを意識してるので」

 慎重すぎる試合運びが直らないキャットを、もどかしい気持ちで見ていた山口代表。そんな時「4月のラウェイに出る選手はいませんか?」というオファーが舞い込む。頭突きあり、ヒジ打ちあり、グローブなしでバンテージのみ。判定はなく、KOしなければどんなに優勢に試合を運んでも引き分けという「世界で最も過激なルール」のラウェイに「キャットを出そう」と決めた。

 山口代表「上手いんだけど、勝負どころで詰められないから、評価が上がらない。ラウェイはいくら技術を見せても『男と男の勝負』をして、倒さなければ勝てない。そんなリングで倒して勝てば『キャットという強い選手がいる』とアピールできる。彼自身がもう一皮剥けて、お客さんを呼べるプロの試合が出来るようになるために、ラウェイが一番いいと思ったんです」

「山口さんに『キャットやるか?』と言われて、1日考えてこれはチャンスだと思って『やります』と言いました。
 キックボクシングとは感覚が違いました。拳にバンテージを巻いた時、オープンフィンガーグローブぐらいの厚みに巻いても、水を含むと硬くなりますし、段々拳の形に小さくなっていくんです。
 相手のミャンマー人も、頑丈でした。倒す感覚のパンチが何発も入って、ハイキックも入ったんですけど倒れなかった」
 YouTubeにも上がっているが、この試合中、山口代表は「倒せるのに倒しにいかない」と激怒し、控え室に戻ってしまった。

「試合後も山口代表の怒りは収まらなくて『次の6月も出すから。せめて玉砕して負けてこい!』と言われました(苦笑)。僕は『手も痛いから嫌です』と言ったんですけど『いや、出ろ!』と」

 山口代表「キャットはパワーも技術もあって、あとは『前に出て倒す気持ち』だけだったので。倒さないと勝てないラウェイならその気持ちを作るのに一番いいので、外会長にキャットを預けて、6月の試合にもう一度出そう、と」

 キャットはクロスポイント吉祥寺から大泉に移籍し、外会長のマンツーマン指導を受けるようになった。外会長は、すぐ山口代表の意図が分かったという。  外会長「体が強くて、技術もあり、考える力も十分にあるので試合前は自分で対策を立てたり『こういう風にやりたい』という意志もある。彼に足りないのは『ハート』の面なので、僕はそこを徹底的に鍛えました」

「外さんは『語らずに熱い人』ですね。いろんな凄い選手たちのミットを持ってきているのに、そういう名前を出して『あの選手はこうしてた』とかは言わず、一人の選手として僕に向き合ってくれました。
 僕は練習中『ここを抜かないとキツいぞ』と思うと抜くクセがついていて。外さんはそういうのを分かってて、強引に引っ張るんですよ。『ここ来いよ! お前ふざけんな!』って、自分が嗚咽が出るぐらい怒られるんです(苦笑)。たまに『なんでこんなに怒られるんだ?』とカッとなることもあるんですけど、それも外さんの手。外さんとの練習で心のスタミナが上がりました。精神的に強くなったな、と思います」

 クロスポイント大泉で「覚醒した暴走猫」浜本“キャット”雄大が誕生した。
 6月16日の「ラウェイinジャパン4 FRONTIER」(TDCホール)でヤー・ザー(ミャンマー)をKOし、ILFJラウェイにおける日本人初勝利。勝利者ベルトが贈呈された。
 9月6日のREBELS.52では強豪ダウサコン・モータッサイ(タイ)と対戦し、判定負け。
 11月26日のM-ONEでは、WPMF日本スーパーバンタム級王者KOUMA(WSR)に挑戦し、激しい打ち合いを制して判定勝ち。WPMF日本スーパーバンタム級王座を奪取することに成功した。

 外会長「KOUMA戦は驚きました。あんなに打ち合えるんだ、と。それはラウェイという大会を経験したことが良かったと思いますし、キャットをラウェイに出した山口代表が凄いなと思います。
 以前のキャットは、ところどころに弱さが見えましたし、日によっても激しい波がありました。そこを僕は変えたいと思いましたし、変わればキャットの持つ潜在能力はもっと試合で出せる、という確信があって、今は本当に変わりましたね。
 嬉しかったのは、KOUMA選手との試合でかなり打ち合ったんですけど、1週間も経たないうちに練習を再開したことです。練習の姿勢も良くて、よく考えて練習をするので、この半年間ですごく伸びたと思います。特にメンタルは強くなりましたね」

 キャット自身、ここ最近の自分の成長を実感している。
「僕はREBELSが出来る前からキックをやってて、その時はめちゃめちゃ強い相手とは組まれなくて。優しいマッチメイクだったんです。
 でも、REBELSになったら急に格上とばかり組まれるようになって、今年は特にそうですよね。ラウェイも、ダウサコンも、KOUMA選手も。普通、みんなやりたくない相手ばかりですし、実際にやったらもの凄く強かったです(苦笑)。
 特に、KOUMA選手との試合は意地になってた部分があります。みんな『KOUMAはパワーと気合いが凄い。普通じゃ考えられない』とか言うんですよ。僕には訳が分からない。僕はKOUMA選手はこう来るなと分かってるし、技も持ってる。今まで積み上げた格闘技理論もあるんです。
 で、その3つがKOUMA選手の気合いとパワーに負けるぐらいならもう格闘技はやめるべきだ、と思ったんです。それぐらい自分に気合いとパワーがないならこの先もずっと壁にぶつかると思ったんで。なので、意地になって打ち合って、ほら、負けなかっただろ、と(笑)。結果的にトントンの試合で(笑)、初めて試合で顔が腫れましたけど」
 KOUMAとの激闘の3日後、願ってもないチャンスが訪れる。
「RIZINが那須川天心の対戦相手を公募した」
 山口代表の「キャット行け!」という指令に、キャットと外会長はすぐさま「行きます」と返答した。






「RIZINのレギュラーになって、天心選手とはMMAルールでもラウェイルールでもやりたい」(キャット)
「天心選手のスピードと距離を実際に知ってるのは大きい。負けるつもりはないです」(外会長)



 「対戦相手公募」には様々な選手が応募したが、浜本“キャット”雄大が選ばれた。決め手は「ラウェイ王者」の肩書きだろう。これでキック、ラウェイ、ボクシング、MMAの各代表が集う、異種格闘技トーナメントが成立した。  誰が見ても「那須川天心のためのトーナメント」だが、REBELS陣営は「かませ犬」で終わるつもりはない。
 キャットと同様、いや、もしかしたらキャット以上に気合いが入っているのが外会長である。
 外会長は、様々なジムで日本のトップファイターのミットを持ってきた。その指導キャリアの豊富さは日本屈指。武田幸三、小比類巻貴之、一戸総太、野杁正明、小澤海斗ら、ミットを持ってきた選手の名前を挙げればキリがないが、注目すべきはそうした選手たちの中に「那須川天心」がいることだ。外会長は今年3月までTARGETで天心のミットを持っていたのである。

 外会長「天心選手のミットは毎回ではなかったですけど持っていました。天心選手の攻撃を自分のミットで受けて、スピードも感じて、距離も感じて、それを肌で知っているのは大きいのかな、と思っています。
 キャットが『天心選手とやりたい』とアピールし続けてきたことは知ってましたし、現役なら『トップ選手とやりたい』と思うのは当然のこと。僕も、ラジャダムナンスタジアムのチャンピオンとの試合も、小林聡さんとの試合も『やらないか』という話が来た時に即決で『やります』と答えてやりました。トップ選手がどこまで強いのか、実際にやってみたいと思ったんです。
 今回、僕らは天心選手に挑戦はするんですけど、僕は負けるつもりはまったくないです。本当に穴のない選手だと分かっているんですけど、やるからには勝つための準備をして臨みます。自分の頭の中でイメージは出来ていて、それはキャットにも伝えてあります。あとはキャットがどれだけ頑張れるか。浜本“キャット”雄大という選手が持つ才能、能力をフルに使って、みんなをあっと言わせます」

 キャットもこの大一番に向けて燃えている。

「REBELSではずっと厳しいマッチメイクでした。1度連敗した時は『死んだ方がいいな』と思うぐらいへこんだんですけど、みんなには『あの苦しみがあったから今があるんだよ』と言って貰えてますね。
 なので、REBELSを背負う気持ちはありますし、ラウェイの誇りも凄く強いです。ラウェイの選手は『殺す、死ね』は使ってはいけないと言われてるので、そういう言葉はなるべく使わないようにしてますし。
 ラウェイの『タイム』のルール(試合中に一度、2分間のインターバルを取ることができる)なんて、倒した方も倒された方もお互いに地獄です(苦笑)。一度倒してもダメージを回復されて再開ですし、倒された方だって一度交通事故に遭って『少し休んだらもう一度』ということですからね。
 そんな過酷なリングだからこそ、リングに上がること自体が凄いことなので、対戦相手をリスペクトして、引き分けならお互い勝者だから称え合おう、というのがラウェイです。そういう過酷な試合を経験しなければ、RIZINで天心選手との試合も組まれなかったわけですし、山口代表の先見の明があったな、と思います。
 55キロのトップは天心選手ですから、ずっと『天心とやりたい』とアピールしてきましたし、大みそか格闘技イベントにも『いつか出たい』と思ってましたし、出る気でいましたけど、このタイミングか、という感じです。
 今、会社の方でも色々と動いてくれています。ベルトを獲り、今回のRIZIN出場も喜んでくれて、やはり結果がすべてですね。
 今のところ「社名は出してはダメ」と言われてます。急にガーっと進んだので、僕の活躍は総務、法務、広報まで行き渡ってなかったんですよ。チャンピオンになったことは知ってるんですけど、こうしてインタビューを受けたり、試合がYouTubeに上がるまで想定してなくて。大みそかの、地上波ゴールデンタイム中継に出たら広告効果も大きいですし、副業申請も出しています。トーナメントに優勝したら300万円ですから(笑)。  天心戦の対策は練っていますし、イメージはしているんですけど『こういう展開になる』と強くは想定してないです。軽く2、3パターン考えて、相手が違う動きをしてきた時のパターンもあるだろうな、と。
 今、描いている画は、RIZINでレギュラーで呼んでもらえるようになることです。天心選手とは2回、3回とやる。MMAルールでも、ラウェイルールでもやって、物語にしたいです。
 笑う人は笑っていればいいと思うんです。何か新しいことをしようとすれば、絶対にみんな笑って『そんなの出来ないよ』という。
 僕は、人生は高い目標を持って、高い位置を目指し続けるのが絶対に大事だと思っていて。僕は、みんながやりたがらない天心選手とやれるものを持っていますし、倒せる可能性がある。その可能性に掛けて、大みそか、RIZINのリングで天心選手に挑戦して、倒します」






プロフィール
浜本“キャット”雄大(はまもときゃっとゆうた)
所  属:クロスポイント大泉
生年月日:1990年2月14日生まれ
出  身:東京都
身  長:167cm
戦  績:23戦13勝(4KO)6敗4分
タイトル:ILFJ認定ラウェイチャンピオン、WPMF日本スーパーバンタム級王者


クロスポイント大泉
東京都練馬区東大泉5-41-21キムラヤビル2F
Tel:03-5934-5560

ピラオ・サンタナ インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2017/11/19


ピラオ・サンタナ!タイトル奪取へ向けて!



 ピラオ・サンタナがいよいよレベルスムエタイのタイトル決勝に挑む。
サンタナの本名はシェリー・サンタナ・ドス・サントス(Shely Santana dos Santos)という。
リングネームは本名を短くした「シェリー・サンタナ」とか「サンタナ」だけでも似合う気がするが本人はピラオ・サンタナ(Pilao Santana)を愛用する。ピラオとはMMAでのパウンドという意味。サンタナの出身ベースはMMAだからだ。

1986年3月19日、サンパウロ生まれの31歳。決して若くはない。そして身長160cmは格闘技ではかなり小柄だ。格闘技でタッパの大きさはかなりなアドバンテージになる。今回のレベルスタイトル認定戦の対戦者となる良太郎選手はサンタナが決勝相手と決まった瞬間に山口会長に推されてリング上に上がり、推した山口会長の気持ちを忖度し、得意のメンチ切りでサンタナに対峙した。顔を近づけて睨み合いとなりながら『こんな小さい選手なのか』とかなり驚いたという。

『リングに入ってきて握手でもするのかと思ったら突然睨みつけてきて驚きました(笑)成り行きで睨み合いです(笑)。みんな僕のことを小さいといいます。でも小柄な僕の全身はパワーの塊です。それに対戦相手のリョウタロウはツハシに負けている。背の高さでもツハシに負けている(笑)。そんなツハシを小柄な僕が1RKOで葬った。ツハシに負けたリョウタロウが僕に勝てる要素がありますか?何の問題も僕の方にはないと思いますよ』

弱点と思われる背丈など全く気にしていない。

『僕にとってオランダでの練習相手は誰もがみんな僕より大きい。僕より小さいのは小学生ぐらいです(爆)。だから試合での対戦相手の背の高さなど何の問題にもなりません。日々の練習すべてが大きい相手ですし家内まで僕より大きい(笑)。オランダ人は男女ともに世界一平均身長が高い民族です。日本人の背の高さなど僕には何の問題にもなりません』

笑いが多く明るい性格ながら強気だ。前回の津橋選手相手での戦いについて訊くと、

『事前に背がかなり高い選手だと聞いたとき、彼はそれを利用し首相撲とエルボーとかヒザで攻め込んでくるだろうと予想しました。念のため180cmほどの選手たちとスパーリングを重ねました。新K-1初代王者のマラト・グリゴリアンともスパーリングしました。マラトのパンチは痛いんです(笑)。ガッツンガッツンやられました。ツハシ首相撲に来るということは、逆に言えば僕の間合いに入ることです。ツハシが来たならすぐに下からアッパーやフックを見舞うよう考えました』




 序盤の作戦の一つとしてサンタナはカポエラのスピーディなバックスピンを一発披露した。津橋選手は上手くかわしたものの簡単にはサンタナへ近づけない状況になった。少々警戒気味にサンタナを首相撲につかまえに出た津橋選手はサンタナの思惑通りに下から伸び上がるパンチの連打を受けることとなった。

『作戦通りでKOできました(笑)』

初登場の6月に壮絶な殴り合いで1RKO負けを喫したとき、「俺にとっての憧れの日本はこれでもう終わりか」そう自覚するとリング上で思わず取り乱す姿を見せたサンタナ。しかし戦いの熱い姿を認めた山口代表は階級を下げてのトーナメント起用を決断。思わぬ再度のチャンスに今度は1RKO勝利。そして心に淀む不安が吹き飛び全身にカタルシスが訪れたサンタナはリング上で咆哮。コーチのマナート会長もともに咆哮した。

サンタナの本来のベースはカポエラだ。ブラジルの伝統競技。今では路上パフォーマンスなども多い伝統文化のようなカポエラだが、サンタナのカポエラはテコンドーの足技に近い実践力を持つ。バックスピンは破壊力が強い。異様にスピーディだ。日本では本格的なそれをまだ見せてないが津橋戦で軽く一度披露しただけだ。試合が膠着したときなどに瞬時に繰り出される彼の飛び道具カポエラは一撃KOの破壊力を秘めている。良太郎選手との決勝では間違いなく繰り出してくることだろう。


4年前に先に移住していた建築業勤務の兄を頼ってオランダにやって来たサンタナ。サンタナ自身はブラジルで4箇所のスポーツジムでMMAおよびカポエラのコーチをしていた。打撃をもっと極めたいという思いが強くオランダに渡ってきた。メジロで練習を重ねるうちに日本での試合が決まったが、オランダでは旅行者滞在だったことで日本入国ビザが取得できず、ビザ取得のためにブラジルに戻っている時間的余裕もなく、泣く泣く訪日を断念した過去がある。2014年秋のことだった。
今はオランダ人女性と出会いがあり結婚し身分的問題が消滅。正式滞在者となり、それに加えてカポエラ普及という名目でデルフト工科大学というオランダトップの大学でスポーツ客員指導員としての職も得ている。

対戦相手の良太郎選手もハードな運命を経ている選手だがサンタナも面白い。良太郎選手は、背負うものがあるからこそ戦える、という。自分を頼り慕う中高生の世代をまるごと抱えて日々やっている。サンタナは、

『リョウタロウが生徒を背負っている。僕も同じだ。来年の春にはパパになる。父親として家内と子どもを背負って生きている。そのための決勝だ。ここで負けるわけには行かない。リョウタロウは僕には勝てない。僕がベルトを巻く。そしてレベルスで防衛を重ねる』

メジロで練習を重ね、メジロジムを場借りして自前のMMAコースを持つサンタナ。己を鍛えるためにはオランダのあちこちのジムに赴いて出稽古を繰り返すサンタナ。ブラジル人という立場がそれを自由にしている。そのサンタナの自由な行動をマナート会長も認めている。

『メジロは自宅からちょっと遠いので毎日練習に行くわけじゃない。要所でポイントを指導される感じ。MMAコースはメジロで教えているし僕を頼ってブラジルからやってくる選手たちがいる。そして最近は欧州のあちこちからMMA選手のブッキング依頼がくる。僕はブラジルの仲間につないで選手をブックしている。セコンドとして一緒に行く。今年は特に週末になるとヨーロッパのあちこちの大会に随行している』

ファイトカテゴリーは57kg~62kg。ライト級はベストウエイト。だから、
『レベルスで58kgとかのトーナメントがあれば出たい。二階級制覇したい』
と狙っている。

今のところレベルスでの2試合でサンタナが見せた内容はどちらも1R。合計で4分ほど。2R~5Rのサンタナの動きやスタミナはどうなのか?まだ誰も分からない。過去のMMAの映像でスタミナは判明している。そしてバランスがいい。良太郎選手との決勝が5Rまでもつれこむのか。それともまた序盤で終わるのか。両者ともにそれぞれの思惑でそれぞれの作戦を立てていることは言うまでもないが、突貫小僧のサンタナが再び場内を急激にヒートアップさせる闘いを期待したい。


プロフィール
ピラオ・サンタナ
所  属:オランダ/メジロジム
生年月日:1986年3月19日生まれ
出  身:サンパウロ
身  長:160cm
戦  績:MMA戦績 12戦08勝03敗01ノーコンテスト
     ボクシング 02戦02勝
     キック戦績 10戦09勝1敗

国崇 インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2017/11/10

「現在4連続KO中! 37歳・国崇を奮い立たせた『ある観客の言葉』」

文:茂田浩司

 11月24日(金)、REBELS.53(東京・後楽園ホール)にて、キック界のレジェンドがREBELS初参戦を果たす。
 現在37歳。プロ生活17年で85戦を戦ってきた、現ISKA&WKA世界フェザー級王者、国崇(くにたか。拳之会)である。
 NJKF軽量級の看板選手として他団体のリングに乗り込んで激闘を繰り広げ、2013年にはラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級タイトルマッチ、2014年にはルンピニースタジアム認定スーパーバンタム級王座決定戦に出場。国内屈指の実力者であることは誰しもが認めるところ。
 だが、ある理由から自分のスタイルを見失い、低迷した時期があったという。
「この年齢になると技術どうこうではなくて、大事なのは『気持ち』。今年に入って、本来の自分のスタイルを取り戻せました」
 レジェンドが低迷から脱するまでの苦悩と、REBELS初参戦に向けた思いを語った。






「スタイル変わった? 昔の国崇じゃなくなったな!」



 プロスポーツ界には「レジェンド」と呼ばれる選手がいる。葛西紀明45歳、イチロー44歳、三浦カズ50歳。
 ただ単に「長くやってる」なら「ベテラン」にすぎない。彼らレジェンドは、トップレベルで10代、20代の伸び盛りのアスリートたちと互角以上に戦い続けている。だから「レジェンド」には常に最大級の敬意が込められている。
 国崇、37歳。現ISKA&WKA世界フェザー級王者。特筆すべきは、練習環境や試合機会の点でどうしてもハンデを背負う地方在住(岡山県)でありながら、東京や大阪のトップ選手たちと互角以上に渡り合ってきたこと。彼は間違いなくキック界のレジェンドである。
 だが、そんな彼も人知れず悩んだ時期があったという。
「一時期、スタイルに迷ってたんです。タイ人の上位ランカーと戦って、首相撲に捕まったり、前半は相手を見る試合のリズムに自分のリズムを狂わされてしまったり。また、よくヒジで切られてしまって(苦笑)」
 国崇のスタイルは、序盤から前に出て、プレッシャーを掛けて相手を追いつめてチャンスには猛ラッシュ。そうして得意の左ボディやヒジ、飛び膝蹴りで仕留めるのが得意のパターンだった。
 だが、アグレッシブに攻めていけばいくほど、タイ人ファイターは首相撲で国崇の動きを止め、ヒジのカウンターを合わせてくる。
「あんまりやられるので、相手を見るようになってしまってたんです。そんな時、昨年10月の『蹴拳』の試合を小川会長の知り合いが見に来てくれました。昔よくキックを見に来ていた人で『国崇が出るなら』と」
 ディファ有明で行われた「蹴拳」で、国崇は野呂裕貴(エスジム)のヒジでまぶたを切られて流血。2RTKO負けを喫した。
 結果もさることながら、国崇は応援に来た観客の言葉に衝撃を受けた。
「その人は『昔の国崇じゃなくなったな。スタイル変わった? せっかく見に来たのになんだよ!』と言ったそうです。それがショックでした…。ガックリと落ち込みました」
 苦悩の末に、国崇は結論を出す。
「昔の、ガンガン前に出て、倒しに行くスタイルに戻したんです。本当にタイ人にはよくヒジで切られたんですけど(苦笑)、でもこっちのヒジを当てて切ってもいたんです。チャンスとリスクは本当に表裏一体なので。
 僕も、切られることを恐れて下がって負けるなんて最低だと思ってましたし、会長も『前に出て切られたら仕方ない』と言ってくれました。昔は、とにかく前に出るしかないと思ってて、その戦い方しか出来ないのもあって前に出ることしか考えてなかったんですけど(笑)。今年2月から気分を一新して、昔のように『とにかく前に出よう』と決めて試合をするようになったら、以前のように倒せるようになったんです。
 だから『ガッカリした』と言ってくれたお客さんには感謝しています」
 今年は2月、4月、7月、9月と4戦して、実に4連続KO勝利。アグレッシブな「国崇スタイル」を取り戻し、勢いに乗った時、REBELS初参戦が決まった。








左から国崇選手、息子の徹心(てっしん)君、裕子夫人

来年3月に第二子誕生を控えて、益々充実の37歳。
「ムエタイ王座は常に意識しています」



 REBELS初参戦を聞き、国崇自身が驚いた。
「想像もしていなかったです。会場が後楽園ホールですし、盛り上がっているREBELSさんで試合ができるチャンスを貰って嬉しいですね。やはり後楽園ホールは雰囲気もいいですし、一番やりたい場所なんで」
 プロスポーツ選手が長く活躍するために必須なのが「良い環境」。この点も、国崇は「申し分ない環境でやらせて貰っています」という。
「僕は20歳の頃からキックボクシング一本でやらせて貰っています。
 拳之会ではインストラクターとして会員さんの指導をして、それ以外は自分の練習をして、木曜日の休みは趣味の釣りをしたり(笑)。日曜日は遠征に行くことが多いですけど、なければ自分の練習をしていますし、週6日、しっかりと練習しています。
 拳之会は若手が育っていて、白神武央(WBCムエタイ日本統一スーパーウェルター級王者)や小椋光人(NJKFフェザー級2位)たちと練習しています。東京のように出稽古に行っていろんな選手とスパーリングをすることは出来ないですけど、それをハンデとも思ってないんで。やれることをしっかりとやっています」
 家族にもしっかりとバックアップして貰っている。
「家族は僕と嫁と6歳の子供と、来年3月末に二人目が生まれます。嫁は、結婚前は東京で試合がある時も応援に来てくれて、普通に『勝ったら嬉しい、負けたら悔しい』という感じで。『また切られちゃったね』とか(笑)。今も地元での試合には応援に来ますけど『都合が合えば行くよ』とかそんな感じです。キックボクシングは詳しくないんで干渉もしないですし、いい意味で『自分は自分』というか(笑)。僕が試合で切られて帰ってきても冷静ですし、でも自分としてはしっかりとバックアップして貰ってると思ってます」
 現在まで、国崇は85戦を戦ってきた。周囲は「100戦」というが、そこに特別なこだわりはないという。
「周りが『100戦、100戦』と言い出してて、僕は『40歳まで』と言ったりしているんですけど、その辺りは全部会長に任せています。会長が『辞めろ』と言えば辞めますし『続けろ』と言えば続けます。会長任せなんですけど、それが僕の意志です。小さい頃からずっと見て貰ってるので、会長が『もう限界だろう』と判断したら止めてくれると思うので」
 国崇のこだわりは「ムエタイ王者」だ。2013年にラジャ、2014年にルンピニーのベルト獲得に「あと一勝」のところまで漕ぎつけたが、今なお視線は「頂点」を見据えている。
「常に考えていますし、前を向いて、勝ち続けていけば必ずチャンスが掴めると思っています。
 この年齢なので、技術的には大きく変わることはないんですけど、とにかく『気持ち』が大事なんだと思っています。
 僕には大した技術はないんで、とにかく前に出て『気持ち』を見せるのと、何より『強さ』をしっかりと見せたいですね。ただベテランで、たくさん試合をして、というのではなくて、常にルンピニーとラジャダムナンの王座は狙っていますし、そのためにはどんな相手に対しても『強さ』を見せなくてはいけないと思っているので。
 全力でREBELSを盛り上げますので、応援、よろしくお願いします」

プロフィール
国崇(くにたか)
所  属:拳之会
生年月日:1980年5月30日生まれ
出  身:岡山県
身  長:168cm
戦  績:85戦49勝(33KO)33敗3分
ISKA&WKA世界フェザー級王者。WBCムエタイインターナショナルスーパーバンタム級王者。元ルンピニースーパーバンタム級6位、元ラジャダムナンスーパーバンタム級9位


拳之会
岡山県倉敷市粒江2077-3
086-426-5560
kobushi@nifty.com

梅野源治 インタビュー公開!

インタビュー

公開日:2017/11/2

「梅野源治が描く『現役ルンピニーランカー攻略』の戦略図」

文・撮影 茂田浩司

 11月24日(金)、REBELS.53(東京・後楽園ホール)のメインイベントを飾るのは、梅野源治(PHOENIX)とインディトーン(ルンピニースタジアム認定ライト級9位)の激突。
 2014年にWBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座、昨年10月にラジャダムナンスタジアム認定ライト級王座を獲得した梅野が、いよいよ史上初の「ムエタイ世界3大王座」獲りへの残り一つ、ルンピニー王座に向かって第一歩を踏み出す。
「9月にスアレック選手と戦い、勝利したことで自信を持ってインディトーンという『強いヤツ』と戦える」
 決戦を前に、梅野の胸中に迫った。







「負けたら引退」と覚悟を決めて臨んだスアレック戦。



 9月6日、11か月ぶりのREBELSのリングで梅野源治は躍動した。「超攻撃型ムエタイ」スアレック・ルークカムイ(スタージス新宿ジム/元ラジャダムナンスタジアムフェザー級7位)は得意のパンチを打つチャンスを狙い続けたが、梅野はミドルキックで終始、距離を支配。バッティングのアクシデントに梅野が激怒してスアレックに詰め寄る場面もあり、緊迫感の中で濃密な15分間の攻防を繰り広げ、判定は3-0で梅野が完勝。
「スアレック選手とやって、パンチも見えていましたし、1発も貰わずに勝てて安心しました。やっぱり見えてる、大丈夫だ、と」
 梅野にとっては、様々な葛藤や苦悩を乗り越えてのスアレック戦だった。
 4月のKNOCKOUTでのロートレック戦は激闘の末に判定負け、5月のラジャダムナンスタジアムでのライト級王座初防衛戦では初回にダウンを奪われて判定負けを喫して王座陥落。このプロ初の2連敗で梅野の体はボロボロになった。
「腕が折れて、鼻が折れて、鼓膜は破れて、目を傷めてモノが二重に見える。強豪ロートレックと戦って評価を落としてしまい、ラジャではみんなで獲ったベルトも失った。僕が格闘技を始めた時の夢は『世界で一番強い男になること』なのに、5月の試合から1か月経っても、トレーナーの構えるミットに当てられなかったんです(苦笑)。このままだと自分で自分の夢をおとしめてしまうことになると思って、加藤会長に『一番強い自分になれず、最初の目標からズレてしまうなら辞めます』と伝えました」
 周囲の慰留で「ここで諦めるわけにはいかない。みんなと一緒にもう1回頑張ってみよう」と思い直した時、REBELSから「スアレック戦」のオファーが届く。
「トレーナーには反対されました。『スアレックは危ない。勝てるけど、パンチを1発でも貰えばまた期間が空けなければいけない。今、パンチャーと戦う必要があるのか?』と。確かに『このタイミングでスアレックか…』という思いはありました。僕にとっては勝たなければいけない相手で、でも1発でもパンチを貰えば怪我が悪化するリスクはあるし、もちろん負けたら終わりです」
 2連敗中の梅野にとって、復帰戦でのスアレックは危険すぎる相手。普通は断るところだが、梅野はオファーを受けた。
「僕は加藤会長を信頼してますし、その会長が山口代表と話し合って出した結論がスアレック戦なんです。それに、相手を選ぶなんておかしい、と思ったんです。『世界で一番強い男になる』と公言している男が相手を選ぶのはおかしいし、絶対に勝たなければいけない相手に勝てないようなら、と。それに、僕が『現役のランカーを呼んでください』というのはこっちのやりたいこと。REBELSさんにも何かメリットを残さなければいけない。だから、僕がREBELSの看板選手のスアレック選手とやって、スアレック選手が勝てば『梅野源治に勝った男』としてK-1に出たり、いろんな道が開けるじゃないですか。スアレック選手も今回の試合のためにタイに帰って練習したり、モチベーションも高い。だから、スアレック選手に負けたら僕は引退でいい。だけど、いい勝ち方が出来ればもう一度『世界で一番強い男』を目指せる」
 スアレック戦は一か八かの「賭け」だったが、梅野は見事に勝った。
「正直、やる前は40%はいけるだろう、60%はどうなのか、いけるのかという思いでした。でも、スアレック選手というリスキーな相手に勝って『もう一度、世界で一番強い男を目指せる』と確信しました。もし『復帰戦だから』と弱い相手を用意して貰っていたら、僕は次の試合も『本当にやれるのか?』と不安を抱えたまま臨んでいたはずなんです。だから、モチベーションの高いスアレック選手と組んでくれた山口代表に感謝しています」







梅野自身がテクニックを解説!
「僕はどう現役のランカーを攻略しようとしているか」



 梅野対スアレックは激しい攻防を繰り広げ、満員の後楽園ホールが大きく揺れた。一度のダウンもなく、KO決着でもなかったが、試合を支配し続ける梅野と、最後の1秒まで『1発』を狙い続けたスアレックの攻防が観る人の心を捉えたのだ。
 梅野は「難しい試合だった」と振り返る。
「スアレック選手は『パンチとローでガンガン来る』というイメージだと思いますが、僕はポンサネーのような本当にガンガン攻めてくるタイプではなくて、スアレック選手は頭を使って、よく相手を見て打ってくるタイプだ、と考えていました。
 また、対戦した前口(太尊)さんに聞くと『ローよりもミドルが効いた』という。そうなると、パンチ、ミドル、ロー、ヒジとほとんどの技が危ない、ということになる(苦笑)。しかも、今回はタイで練習してきてモチベーションも高い。間違いなく、僕が今まで見てきた以上のスアレック選手が来る。
 僕には目の不安もあったので『1発も貰えない』と気をつけて戦いましたけど、気をつけすぎてパンチやヒジがあまり出なかった、という反省点があります。僕の戦い方は、ムエタイでいけば間違いなく正解です。別に下がったわけではないですし。ですけど『全局面で勝ちたい、圧倒したい』と言ってた割にはパンチをガードするばかりになって、あまりパンチを返せなかった。それはトレーナーにも試合後すぐ指摘されて、反省すべきだったと思っています」
 その上で、観客の反応が良かったことを、梅野はこう分析する。
「REBELSさんに上手く煽って貰いましたよね。スアレック選手がこれまで日本人選手のトップどころをKOしたり、ダウンを奪ってきたことや、試合前にタイで合宿までしてきたことを紹介して『打倒梅野に燃えるスアレックの強打が当たれば、梅野も危ない』と煽ってくれました。
 だから、お客さんも『スアレックの1発が当たるのか?』『梅野はどう戦うのか?』という見方になって、僕がミドルを蹴り続けて、スアレック選手にパンチを当てさせないことを『凄い』と評価してくれた。応援に来てくれたみなさんも喜んでくれましたし、改めて『試合の見方』を示しておくのは大事だな、と思いましたね」
 スアレック戦完勝という結果を受けて、REBELSはさらなる強敵を梅野のために用意した。
 ルンピニースタジアム認定ライト級9位、「空飛ぶムエタイ」インディトーンである。梅野源治、ルンピニー制覇への道がここから本格的に幕を開ける。
 今回は、梅野自身に「インディトーンの特徴」や「梅野源治対インディトーンのポイント」を解説して貰った。
「インディトーンは飛び膝蹴りをよく打ってくるので『空飛ぶムエタイ』は分かりやすいキャッチコピーだと思いますね。
 特徴は、とにかく体が強くて、見た目はゴツくて、ライト~スーパーライトでよくやっていますが、彼がKO負けをしたところを僕は1度も見たことがないんですよ。今、タイで11戦無敗9KOというクラップダムという選手が話題になっているんですけど、そのクラップダムともインディトーンはやっていて、判定で負けましたけどKOされてない。とにかく打たれ強いです。ローやミドルを喰らってもよろめかない、パンチも嫌がらない。組んできて、ロックする力が強く、主にミドルキックと首相撲で戦う選手です」
 その相手を梅野はどう攻略しようというのか?
「もちろん、組んだ展開で負けないようにはしますけど、相手の得意なところで勝負する必要はないですからね。
 REBELSで初めて僕を見る人に分かりやすく伝えておきたいんですけど、前回のスアレック選手はパンチャー。パンチャーにはミドルを蹴った方が勝ちやすいので僕はその戦法を採りました。
 今回のインディトーンのような首相撲の選手には、組み際にパンチを打っていきます。その方が勝ちやすいですから。
 ムエタイにはセオリーがあって、これがテクニックを駆使する選手であれば、僕はどんどん前に出て、組んでいって、相手の体力を削っていきます。  インディトーンのような『組む選手』も色々なタイプがいます。パンチを打ってそこから組む選手、ひたすら組む選手、ミドルキックをバンバン蹴ってから組む選手。タイプによって戦い方は変わってきます。相手によって「蹴り30%、パンチ40%」というように、比重を変えていきます。
 僕は今回、パンチを多めに使いますが、インディトーンの出方次第でミドルキックは、ローは、ヒジは、首相撲は、と使う技の比重を変えて対応します」
 ムエタイに勝つためのカギは「いかに臨機応変に戦えるか」だと梅野は考えている。
「僕は、試合前に相手の動画を見ておいて『だいたいこう戦おう』と決めておきますけど、実際にやってみないと分からない部分も大きいです。基本的に、タイ人は何でも出来ます。今回も、僕がパンチを多めに使うと、インディトーンが『じゃあミドルを蹴ろう』と試合中に作戦をチェンジしてくることがあります。それに対応して、僕も蹴りやパンチの比重を変えていく。どっちが臨機応変に変えていけるかで勝敗が変わってくるんです。
 スアレック戦を経て『いける』という確信が僕にはあります。
 簡単なことをやっているわけじゃないので、苦悩も挫折もありますし、ダサいところを見せてしまうかもしれないですけど、僕は世界で一番高いところを目指して、絶対に夢を掴んで『応援してくれたみんなのおかげで獲れました』と言いたいです。
 今回はそのための第一歩。絶対に勝利を掴んで、世界初の『WBC、ラジャ、ルンピニー王者』へ前進します。みなさん、ぜひ会場に足を運んで、応援をよろしくお願いします」

プロフィール
梅野源治(うめの・げんじ)
所  属:PHOENIX
生年月日:1988年12月13日生まれ
出  身:東京都
身  長:180cm
戦  績:52戦40勝(18KO)9敗3分
WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王者、元ラジャダムナンスタジアム認定ライト級王者


PHOENIX
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