ヤスユキ選手 インタビュー公開!
インタビュー
公開日:2015/09/08
2015年9月16日(水)に後楽園ホールで行われます「REBELS.38」にて、大月晴明選手と対戦いたします、ヤスユキ選手のインタビューを公開させていただきます。
「武運にかける」
聞き手:布施鋼治
ーーようやく大月晴明選手との一戦が決まりました。
ヤスユキ ちょっと決まらないかなと思っていた時期もあったんですよ。正直もう無理かなと思っていた時期もありましたね。でも、自分としては来年に持ち越してもやりたかったので、「来年前半までには」と目安はつけていました。
--ずっとヒジありにこだわっていたんですよね。
ヤスユキ そうですね。本当は無制限ラウンドの方が良かったんですけど、それだと(興行時間のことを考えると)厳しいので、まあしょうがないかなと思いました。まあ、3分5ラウンドでヒジありだったら問題はない。
--無制限を望んだ理由は?
ヤスユキ 完全決着という思いですね。自分が試合をして「あと2Rあったら」「もう3Rあったら」と心の淵で思うところがあったので、そういう思いはもうしたくないと提案したんですよ。まあ現実的には厳しいと思いつつ、言うだけは無料じゃないですか(笑)。
--今回VS大月の対策を立てるのは楽しい?
ヤスユキ そうですね。やっぱり大月選手は特殊じゃないですか。センチャイやパコーンと闘う前も一応プランニングはしたけど、ハッキリいって彼らにはプランニングのしようがなかった。
--ふたりともオールラウンダーで穴の少ないタイプですからね。
ヤスユキ そうなんですよ。でも、大月選手は対策の練り甲斐があります。「あ~でもない」「こ~でもない」と考えながら、結局頭の中を3周くらいしましたかね。実際いろいろ試してみたんですよ。
そうしたら「あれもダメ」「これもダメ」ということになって、最近になって「やっぱり落ち着くのはここかな」という感じになりました。
--具体的にいうと?
ヤスユキ 自分本来のスタイルというか、じわじわと詰めて圧力をかけていこうかなと思います。
--その戦法が通用するという確信もある?
ヤスユキ イヤだとは思うんですよ。僕はバッと突っ込むタイプではない。それもベムを相手に試しました。実際に自分がバッといけるのかなと思ったけど、厳しかった。突っ込んだり、距離をとったりもしてみたけど、どれもしっくりこなかった。そこで普段のスタイルでやったら、なんかいい感覚かなと思ったんですよ。
--いつも通り、同門のベムさんが大月選手のダミーを演じているんですね。
ヤスユキ ベムは大月選手の真似がムチャクャうまいですよ。完璧にコピーできる。もちろんパンチ力は違うけど、「ベムのパンチ力でこれくらいなら、大月選手のパンチだったらダウンするかな」とか考えながらやっています。パンチのもらい方も考えないといけないですからね。
--じわじわ詰めていって、徐々に自分のリズムと距離を作り、最後は相手がパニックになったところで倒しにかかる。それがヤスユキ選手の勝ちパターンだと思います。
ヤスユキ そうですね。でも、それは大月選手も重々わかっていると思うので、僕が彼なら序盤で決めてしまおうと思いますね。
--以前インタビューした時、自分が対戦相手だったらどう闘うのかも考えると言っていました。
今回もそう?
ヤスユキ ハイ。自分が大月晴明だったら、ヤスユキをどう崩すのか。それをすごく考えています。そのうえで自分はどうしようかなというのはありますね。僕が何をしたら嫌がるのかを突き詰めるために、自分が大月選手の真似をしてスパーをすることもあります。
--相手の拳の硬さのイメージは?
ヤスユキ(GONGの対談で会った時)拳はデカかったんですよ。僕の1.5倍くらいあったんじゃないですか。その時、岩石で叩かれるような感じになるのかなと想像しました。
--客観的に見て大月選手のどこがすごい?
ヤスユキ もちろん代名詞になっているハードパンチもすごいけど、あ~、やっぱりいやらしいところですかね。試合を見ていやらしいと思います。
--耳の裏とか、ほかの選手とは違うところを攻撃してくるという話ですからね。
ヤスユキ それは僕も思いますね。練習でもそういうところを意識して狙ってやっているんでしょう。
当然、僕もそれは想定します。大月選手の渾身の一撃をもらう想定もしています。もらったうえでどうなるか。そこで僕の武運が試されるわけです。
--武運ですか。
ヤスユキ ハイ。そこで倒れるのか。それとも持ちこたえられるのか。実際にもらってみないとわからないけど、結局数センチの差で状況は変わってきますからね。だから自分の武運にかけるわけです(微笑)。もちろんもらわないのが一番だけど、長年僕の試合は見てくれているみたいなので、僕の動きも研究しているでしょう。その一方で自分のパンチが当たらないことはないとも思っています。
--大月選手独特のフェイントは?
たとえば目でもかなりフェイントをかけているように見受けられます。
ヤスユキ 僕は相手の目は見ません。ずっと胸元を見ています。
--ところで、大月選手はヤスユキ選手のどこに魅力を感じたんでしょうかね。
ヤスユキ どこなんですかね。やっぱりイケイケオラオラじゃないところなんじゃないですかね。
--おふたりには「打たせずに打つ。自分は攻撃できても相手からは攻撃できないポジションから攻撃する」といった共通項も見受けられます。
ヤスユキ そういったところは近いのかなと思いますね。自分から見ていても、やりにくいなぁというのはあります。
--さっきヤスユキ選手は大月はやりづらいタイプという感想を漏らしたけど、向こうもそう思っていても不思議ではない。
ヤスユキ 本当にどういう展開で来るんですかね。ないものはできない。やっぱり長年培ったものがあるわけだから、そんなにいきなりガラッと変えることはできない。それは僕も一緒です。だから探り合いとか言いながらやっぱり強い方が残るでしょう。(今回の試合に向けて)フィジカルを上げようとは思わなかった。だって向こうの方が力は強いわけですから。それよりは技術や感覚を磨く方がいいと思っています。
--モチベーションは上がっていますか。
ヤスユキ そこは一緒。試合なので一緒です。もちろん大月戦が決まるまではワクワクドキドキ。決まってからも3日くらいはずっとそうでした。でも、いまは淡々と決めた練習をやるだけです。気持ちの抑揚もない。
--大月選手は入場シーンだけで自分の世界を作り上げるじゃないですか。
ヤスユキ あれで会場を持っていきますよね。あれも技のひとつ。対照的に僕は会場の雰囲気を作るような選手ではないので。
--そこにやりづらさは感じない?
ヤスユキ そこはない。勝負するところではないと思っているので。無視ですね。ゴングが鳴ってからが勝負です。みんなそこで呑み込まれてしまうけど、僕はああいうパフォーマンスは気にならない。
リング上で対峙してその瞬間その瞬間でしか何も思わないので。
--現段階ではどのあたりでクライマックスが訪れると思いますか?
ヤスユキ 1Rか4Rですね。僕が行くなら4R。大月選手が来るなら1Rになるかなと予想しているからです。1Rで僕が倒される可能性もあるけど、そこを乗り切ったら4Rに僕が行く可能性もあるのかと。僕は後半に強いので、そこまで残ったらいけるんじゃないかと予想しています。
--この一戦で一皮むけそうな予感もある?
ヤスユキ それはありますね。勝ち負けもそうだけど、もし自分がKOできるようなことがあれば、得るものは大きいと思いますね。それは容易に想像できます。大月晴明が倒れている姿って、なかなか想像できないですよね?僕は「首を蹴ったら倒れるのかな?」となんとか想像しています。首は蹴ったら誰でも倒れる。頭とかテンプルは人によって強い弱いが出てくる。大月選手の場合、顔面を叩いてもたぶん倒れそうもない。だったら首を蹴ろうかなと考えています。僕はユーチューブとかでいろいろな動画を見ているんですよ。軍隊の動画もチェックしていたら、首に一撃を見舞って相手を気絶させてしまうシーンを見ました。その時、ア~ッ、首だなと思ったんですよ。
--先程の数センチの話ではないけど、人は急所をまともに突かれたら、ちょっと刺激で簡単に倒れてしまいますからね。
ヤスユキ そういうふうに考えたら、大月選手のパンチはどうなんでしょうね。意外とピンポイントを狙ってくるようにも見える時もあれば、岩石のようにバシャ~ッと全部持っていく時もある。
--時にはラリアットのようにパンチというよりも腕が飛んできますからね。細かいパンチと粗いパンチの混ぜ方がうまい。
ヤスユキ そうでしょうね。じゃないと、あそこまでにはなれないでしょう。普通の人だったら、絶対真似できない。やっぱりあの肉体があるからこそできるでしょう。身体に合った闘い方をしているんだと思う。逆にムエタイスタイルをやっていたら、大月選手は大成しなかったでしょうね。まあ変わり者ですよね。アスリート体質ではないと思います。
--基本は研究者系ですよね。
ヤスユキ そうですよね。大月選手は必要最小限の力で相手を倒そうと努力する。それは武道家の心理だと思う。対照的にアスリート系だと手数で攻めてみたり、頑張って頑張ってっていうのがすごく大きい。僕もどちらといえば研究系で、最小限の力で相手を倒したいという思いが強い。
--そこは似た者同士なんですね。当日、お客さんに一番注目してほしいところは?
ヤスユキ その質問は意外は難しいですね。なんて言うんでしょう。やっぱり独特の間合いを見てもらいたい。本当に好きな人にしかわかってもらえないかもしれないけど。
--見る人が見れば、「あっ、いま大月が間合いを奪った」とわかるような一戦ですね。
ヤスユキ そうなんですよ。マニアックといえばマニアックですね。もちろん大月選手がバンバン来てくれたら、派手な試合になると思いますけどね。
--その一方で剣の達人同士がじっと見合うような一戦になる可能性も秘めていると。
ヤスユキ その可能性は十分にあります。自分の気持ちの中では「行くぞ」と思っても実際に試合になったらわからないですからね。
--レフェリーが再三「ファイト!」を促す試合になるかもしれない、と。
ヤスユキ そういう試合も想定しています。でも、それはそれで極限の緊張なのかなと自分では思っている。今年1月、翔センチャイジム選手と闘った時も結構「ファイト!」をかけられましたからね。本音を言えば、「いや、そうじゃないんだよ」と言い返したかったんですけとね(苦笑)。
--対峙しただけでも、ものすごい緊張感が生まれると思います。
ヤスユキ その緊張感は楽しみたいですね。
--大月選手は、負けたら辞める覚悟でこの一戦に臨むようです。
ヤスユキ やっぱり人は吹っ切れた時にスタミナとか関係なくなる。だから「中盤以降、相手のスタミナは落ちるだろう」と予測していたら痛い目にあう。だから僕も中盤までスタミナを温存させてなんてことは全然考えていませんよ。格闘技生活を終えても、「大月さんとの一戦は印象深かった」と思いたい。そういう意味でも楽しみな一戦です。
○プロフィール
ヤスユキ(やすゆき)
所 属:Dropout
生年月日:1985年3月22日
出 身:滋賀県
身 長:174cm
タイトル:初代 REBELS-MUAYTHAIスーパーフェザー級王者/元NKBライト級王者
通算戦績:30戦22勝(7KO)7敗1分