ヤスユキ選手 インタビュー公開!
インタビュー
公開日:2016/1/21
2016年1月24日(日)にディファ有明で行われます「REBELS.40」にて、宮越慶二郎選手と対戦いたします、ヤスユキ選手のインタビューを公開させていただきます。
「大月戦同様、宮越戦もどういう展開になるかわからない。そういう1戦が1番楽しみ」
聞き手:布施鋼治
──まずはヤスユキ選手としての2015年度重大ニュースを教えていただけますか。
ヤスユキ 2015年は4試合したんですけど、結局タイ人には2敗している。(しみじみと)なかなか越えられないですよね。
──日本人選手相手には連勝していますけどね。昨年11月29日には階級の枠を越え、日本人キラーのゴンナパー・ウィラサクレックに挑みましたが、判定負けを喫しました。
ヤスユキ 勝てると踏んでいたけど、甘かったですね。もっとゴンナパーは粗い選手だと思っていたんですよ。そこでカウンターで仕留めてやろうと思っていたけど、向こうから来なかった。パンチも数発しか打ってこなかった。そのパンチも重くて、これを食らったらヤバいなと思いました。結局、パンチでそういう怖さを植えつけられたのかもしれない。2R以降は距離をとられたと思うけど、そのとり方も精密機械のようでしたね。
──5月に闘った”生きる伝説”セーンチャイ・PKセンチャイジムの手応えは?
ヤスユキ セーンチャイのうまさは絶妙でした。攻防の精度はゴンナパーより高かったと思う。ただ、攻撃力だけをとったら、ゴンナパーの方が上だったかなと。
──セーンチャイの精度はどのへんに感じた?
ヤスユキ 距離感にも精度の高さを感じたけど、パンチを効かされたんですよ。パンチ力はゴンナパーの方が上だったけど、セーンチャイは見えないパンチばかり打ってきた。見えないところでもらってしまうから効いてしまう。ゴンナパーのパンチは見えているうえで効くので、それはそれでヤバいと思ったんですけどね。
──セーンチャイの強さを裏付けるエピソードですね。
ヤスユキ タイ人とやるたびに距離の大切さを痛感します。勉強させられますねぇ。
──第3者から見ると、1番インパクトのあった9月の大月晴明戦は?
ヤスユキ タイ人と闘った時とは逆に僕がしっかり距離を支配することができたのが勝因ですね(3RTKO勝ち)。こういうふうに動こうと思ったイメージがピッタリとはまった。
──ヤスユキ選手と大月選手はどちらもカウンターの名手というイメージがあります。
ヤスユキ どちらが先にカウンターをとるのか。そのへんはせめぎ合いでしたね。先に詰めた方が負けとか、そういうふうになってくる。結果としてあの試合は僕が待ち、大月選手が先に攻撃してきた。また逆のパターンだったら、試合結果も違っていたかもしれない。こっちが距離をとったら、向こうは打開しようと攻撃してきますからね。そこでしっかりと自分の攻撃を当てられたのが良かったんじゃないですかね。
──そして迎えた2016年。去年は日本人とタイ人と交互に闘いましたけど、その流れを踏襲して新春第1戦はWBCムエタイ・インターナショナル・ライト級王者に君臨する宮越慶二郎選手との1戦になりました。
ヤスユキ やりたい選手だったので、オファーが来た時は即答でした。戦力の高さはタイ人がずば抜けているけど、日本人にはクセがあるのでそれはそれで別のやり甲斐がある。
──クセというのは?
ヤスユキ 日本人はオリジナリティに溢れていますよね。タイ人は判でついたとまではいわないけど、みんな同じリズムなんですよ。それに比べたら、日本人はみんなバラバラ。
──言われてみたらそうですね。
ヤスユキ だからタイ人と日本人と交互に闘うということは僕の中では身になっている。僕はいろいろな選手と国籍に関係なく闘いたいと思っている。もちろんその中でタイがトップなのはいうまでもないことだけど、そのタイのトップに勝つためにはクセのある選手とも闘わなければいけない。
──宮越選手にはどんなクセがある?
ヤスユキ あれだけサイドの動きと出入りができる選手はなかなかいない。僕としてはその出入りの時に打ち落としたいと思っています。たぶん向こうもそうだと思うけど、やることはすでに決まっている。どう裏をかくか。お互いここまでやってきたものをそうそう崩せない。だから、宮越戦に向けて特別なことをしているわけでもない。ただ、僕も30歳を超えたので、体力を上げていくより攻防の精度を上げようと思うようになりました。
──具体的にいうと?
ヤスユキ 僕、打ち込みはビッグミットを使ってやっているけど、Winning製を使っているんですよ。ミットの真ん中には社名のロゴがあるんですけど、左のWや右のgを打ち分ける練習をしています。
──打ち分けるって、そのタグはそんなに大きなものではないでしょう?
ヤスユキ 横10㎝もないと思うけど、真ん中のnを狙うこともあります。今までは面で叩くというか、なんということなくパンパン叩いていただけだったんですけど、意識して点で打つような練習を心がけています。右の人指し指と中指のナックルの部分がドンピシャで当たるイメージで。
──試合でも活かせそう?
ヤスユキ その成果はスパーをしてみないとわからないですね。僕はミット以外の練習をしないので、そこをもう少し突き詰めようかなと思っています。ずば抜けたスピードやパワーを持っているわけではないので。
──でも、打つタイミングは素晴らしいと思いますよ。
ヤスユキ ありがとうございます。僕はタイミングと打つポイントに特化していかないと勝てないのかなと考えている。これからどう頑張っても、スピードが倍になるわけでもパワーアップするわけでもない。自分の伸びしろを考えたら、(身体能力で)ゲーオとかセーンチャイのクラスに及ぶことはない。彼らにどうやって勝つかという問題を突き詰めていったら、細かいことをやっていくしかない。彼らからダウンやKOを奪おうとしたら、急所を点でつくしかない。
──宮越選手に「ヤスユキ選手より勝っている点」を聴いたら、即座にスピードと答えていました。
ヤスユキ うんうん。ただ、スピードにもいろいろありますよね。瞬間に動くスピードもあれば、サークリングのスピードもある。踏み込むスピードもまた違いますし。一口にスピードといっても、いろいろあるわけです。僕がやろうとしていることは時速160㎞の球を同じ速度で動く車の窓からとるみたいな。そういうことをやりたいと思っています。ボクシングでいうと、スリッピング・アウェイみたいなテクニックですね。
──パンチが伸びる方向と同じ方向に顔を背けるようにして受け流す高等テクニックですね。昔、川島敦志選手のそれを見てしびれた記憶があります。
ヤスユキ パンチと同じスピードでアゴを動かす。そこまでの高等テクニックはできないかもしれないけど、体さばきで少しは対応できたらいいなと思いますね。
──そういえば、大月選手同様、宮越選手もカウンターの名手ですね。
ヤスユキ 大月選手とやった時と同じようにせめぎ合いになるんじゃないですかね。そこでじれた方が負けになるかどうかはわからないけど。お互い自分の得意な土俵でやりたいわけですからね。ただ、宮越選手は自分から攻めることもできる。
──インタビューでは、ヒジありよりヒジなしの方が得意だと言っていました。
ヤスユキ そうですか。突っ込む時には突っ込んできますよ。ユッキー(髙橋幸光)との一戦は生で見ていたけど、宮越選手の方からガンガンいきましたよね(宮越が3R判定勝ち)。
──髙橋選手は典型的に待ちのタイプですからね。
ヤスユキ だったら行くしかないですよね。ただ、僕はユッキーほど後ろには下がらないので(微笑)。そこはどうなるかという感じですね。どういう展開になるのか。やっぱり試合のオファーをいただいた時に、どういう展開になるのかわからない一戦が一番楽しみ。
──発表された時点で勝ち負けがわかるようなマッチメークは、見ている方も興味が半減してしまいます。
ヤスユキ そうですよね。この選手とやったらだいたいこういう展開になるだろうとわかったら、やっている方も面白くない。大月選手との試合の時もそうだったけど、今回も自分でどうなるんだろうという緊張感がある。宮越選手は結構ポカッともらう時もあるので、そこを逃さないようにしたい。
──年末年始もマイペースで調整?
ヤスユキ そうですね。
──年末の格闘技とボクシング中継は?
ヤスユキ 結構あちこちの番組を観ていましたよ(※ヤスユキは滋賀県在住)。一番インパクトがあったのは内山高志さんの世界タイトルマッチでしたね(3RTKOで内山がWBA世界スーパーフェザー級王座11度目の防衛に成功)。あとは井岡(一翔)選手の防衛戦ですかね。
──格闘技の方は?
ヤスユキ RIZINは29日の方も面白かったですね。ヘビー級のトーナメントとかレベルが高いと思いました。ヒョードルの弟子(ワジム・ネムコフ)とか途中で負けてしまったけど、こんな強い選手もいるんだと思いました。才賀紀左衛門選手と所英男選手の1戦も面白かったですね。
──宮越戦以降の方針は?
ヤスユキ 去年から同じことを思っているけど、選手としては今がピークだと思うので強いタイ人に一回は勝ちたい。僕、強豪タイ人には3連敗中なんですよ。
──最近はタイのメジャースタジアムの平日興行で現役ランカーや現役王者と対峙する日本人選手も増えてきました。
ヤスユキ あ~、僕にはできないですね。福田海斗選手は賭け試合で負けてしまったんですか? ムエタイという競技はわかりづらいというか、日本の格闘技とは考え方もちょっと違いますからね。
──その考え方には激しく同意します。
ヤスユキ ムエタイの中でも強さは持った選手は多いと思うので、僕はそういった強さを求めていきたい。ゲームとしてのムエタイはちょっとあきらめています。
──向こうのムエタイはゲームの中にファイトが隠れているような感じがします。
ヤスユキ そうなんですよね。本当にムエタイというギャンブルの中に隠れている本当の強さを追求していきたい
──一方、日本人選手で闘いたいのは?
ヤスユキ あの人です。(MA日本ウェルター級王者の)為房厚志選手!
──ゴンナパー同様、階級が異なるじゃないですか。
ヤスユキ 合わせられないですかね。カッコいいなと思いまして。同じ関西圏なのでスパーでもいいから、一度手合わせしたいと思っているんですよ。
──同業者の評価は高い選手ですよね。
ヤスユキ 為房選手は距離のとり方とか見切りがうまい。モハン・ドラゴン選手との一戦が印象深い。ああいう選手はなかなかいない。
──去年はマキ・ピンサヤーム選手との対戦の機運が高まりましたが、いつのまにか立ち消えになってしまいました。
ヤスユキ そうなんですよ。ピンサヤームもうまい選手だけど、今年できるのかどうか。動きもいいし、いつも笑顔なのが印象的なタイ人ですよね。日本での生活がよっぽど楽しいんでしょうね。
──最後に宮越戦を心待ちにしているファンにメッセージをお願いします。
ヤスユキ ウワ~ッという大歓声が起こるような試合にはならないかもしれません。反対に観客が「あ~っ、こんな感じになるんだ」と唸るような試合になるんじゃないかと予想しています。
○プロフィール
ヤスユキ
所 属:Dropout
生年月日:1985年3月22日生まれ(30歳)
出 身:滋賀県草津市出身
身 長:174cm
タイトル:初代REBELS-MUAYTHAIスーパーフェザー級王者
通算戦績:32戦23勝(8KO)8敗1分