ハチマキ選手 インタビュー公開!
インタビュー
公開日:2016/5/22
「自分にしか魅せられない試合があると思う」
聞き手:布施鋼治
取材場所である水道橋のカフェでハチマキはファンらしき男性に声をかけられた。
さすがチャンピオン、格闘技ファンが集う街というロケーションを差し引いても、努力家のハチマキが周囲から注目されているという状況は嬉しかった。
席に戻ったハチマキにどんな会話をしていたのかを聞いてみると、「あの方はハリケーン山田さんですよ」というオチが待っていた。
ハリケーン山田抱腹絶倒の試合を行なうことで話題のキックボクサーだ。
かつては名門山木ジムに所属していたので、PHOENIXのスネーク加藤会長の弟弟子にあたる。
ハチマキはかつて会場で山田に挨拶したことがあると言う。
「山田さんがちょうどハリケーン山田として試合に出始めた頃、加藤会長から動画が送られてきて、『これを見てプロ魂を勉強しろ』と言われたんですよ」
── ひとり暮らしを始めたそうですね。
ハチマキ ハイ。(今まではトレーナーのタイ人と一緒に)暮らしていたけど、ストレスがなくなりました。「なんでもっと早く始めたなかったのか?」という思いもあるけど、シェアしていた頃は家賃も安くて助かっていた。新人時代からひとり暮らしをしていたら家賃を稼ぐために練習時間が減っていたかもしれない。イヤなことは全部修行だと思えばいいんですよ(微笑)。
── タイトルマッチを目前に控えた心境は?
ハチマキ いろいろ団体はあるけど、やっぱりチャンピオンである限り、一番強くなければいけないと思う。例えばゴンナパーはWPMFの世界王者だけど、僕が勝たなければいけないという思いでやっていました。去年から負けが続いているという状況なので、不甲斐ないという思いはありますね。去年テヨン選手に負けた直後は結構落ち込んで、「このまま続けてもこれ以上頑張れるのか」「結局、自分はこのくらいの立ち位置で終わってしまうのではないか」と考え込んでしまいました。ただ、前回潘隆成選手に負けてからの立ち直りは早かったですね。
── その理由は?
ハチマキ 落ち込んでいる時間がもったいないというか、落ち込んでいても強くなれるわけではない。潘戦の次の日くらいには今回の試合が決まったので、やるしかないと気持ちを完全に切り換えました。
── 期待のポープである潘選手は想像以上に手強かった?
ハチマキ 僕は結構相手を過大評価するところがあって、それで必要以上に慎重になってしまったり、戸惑うところがある。勝手に「なんか隠しているんじゃないか」と思ったりしてしまうんですよね(微笑)。この間もそういうところがちょっと出てしまったのかなと思いますね。
── 渡辺理想選手も過大評価する?
ハチマキ やっぱり技もキレるし、パンチ力もある。自分にはないものを持っている選手だと思いますね。
── ハチマキ選手同様、4月のREBELS.42にも上がった渡辺選手の試合は観た?
ハチマキ 次が僕の試合だったので見ていないんですよ。まだ映像も見ていないけど、首相撲でやられていたというふうに聞いています。でも、こればっかりはやってみないとわからないんですよね。
── ファイトスタイルは水と油といっていいほど正反対です。
ハチマキ そうですね。僕とは対照的なので、見る人にとっては面白いんじゃないですか。
── どんな科学反応を起こすのか楽しみです。
ハチマキ 僕は試合を楽しみたいとは思っていない。勝ちたいという思いが一番強いけど、あとは見ている人に何かを伝えられる試合をしたい。派手な試合にはならないかもしれないけど、別にKOでなくても伝えられるものはあると思う。そんなことを言って何年かぶりにKOしてしまうかもしれないけど(含み笑い)。
── その予感はある?
ハチマキ ないですね。勝つイメージはあるけど、自分がKOするイメージはわかないっス。「こういう攻撃が当たるんじゃないか」「こういうふうに攻めよう」というイメージはあるけど、自分のパンチが当たって倒れるイメージはない。
── 選手としての自分をものすごく客観視していますよね。
ハチマキ そういう面はありますね。今回ちょうど試合の直前にキックを始めて10年になる。そして6月19日に30歳になるんですよ。
── おめでとうございます。Wの節目ですね。
ハチマキ やり始めた当初はいま以上にネガティブでしたからね。
── それでも、チャンピオンまで昇りつめたというのは本当にすごいことだと思います。
ハチマキ ありがとうございます。開き直りではないけど、自信があろうとなかろうと結局やるしかない。たとえ試合で自分の力を出せなくても、できることをやるしかない。そういうふうに思えるようになってからは精神的に変わりましたね。
── 今回2度目の防衛戦という部分は意識する?
ハチマキ 自分はREBELSに育ててもらった選手だと思っているので意識しますね。
── REBELSっ子。
ハチマキ そう、1本目のベルトも2本目のベルトもREBELSなので、自分はREBELSっ子だと思っています。これまで形はどうであれ、REBELSを盛り上げてきたという自負もある。一方、渡辺選手の方は今年になってからいきなりREBELSに来て2戦していきなりタイトルマッチじゃないですか。それでチャンピオンになっても、果たして本当にREBELSの選手といえるのか。だからこそ自分が勝たなきゃいけない試合だと思っています。
── 渡辺選手のようなダイナミックな蹴りを使う選手と闘った経験は?
ハチマキ ああいう後ろ回し蹴りとかを使う選手とは闘ったことがない。浴びせ蹴りを使う選手はいるけど、渡辺選手のそれはホンモノだと思うので。
── 中には小休止をとるために、浴びせ蹴りを使う選手もいますからね。
ハチマキ まあ、でもあんまりそういうところは気にしていない。それよりも自分のパフォーマンスがどこまでできるのかという部分の方が重要だと思っているので。
── 今回はメインイベントではないですけど、試合内容で自分がREBELSのメインイベンターであることを証明したい?
ハチマキ そうですね。今回はラジャダムナンスタジアムのタイトルマッチも行なわれるので仕方ない部分もあるけど、自分の試合のあとにRISEのトーナメントが組まれているじゃないですか。確かに瑛作選手と内藤選手の一戦はすごいカードだし、こうなったのは自分のせいだと思うけど、納得しちゃいけないと思うんですよ。本来ならばREBELSというイベントではREBELSのタイトルマッチが一番重んじられるべきでしょう。
── 最後にメッセージを。
ハチマキ 10年やっているけど、いまだキックボクシングは難しいと思う。だから迷って悩んで葛藤しながらやっているけど、それでも自分にしか魅せられない試合があると思う。それをぜひ会場で確認してください。
○プロフィール
ハチマキ
所 属:PHOENIX
生年月日:1986年6月19日生まれ(29歳)
出 身:埼玉県さいたま市
身 長:175cm
タイトル:REBELS-MUAYTHAI スーパーライト級王者
通算戦績:30戦15勝(2KO)11敗4分