REBELS代表 山口元気 2018年、所信表明インタビュー
インタビュー
公開日:2018/1/30
聞き手:茂田浩司「2017年はピンチをチャンスに転換できた。今年はタイトル争いを活性化させて、選手たちをもっともっと輝かせます!」
2010年1月23日にディファ有明で旗揚げし、9年目を迎えるキックボクシング&ムエタイプロモーション「REBELS(レベルス)」。
2018年の第一弾興行は2月18日(日)、東京・後楽園ホールで開催する「REBELS.54」。メインイベントを飾るのはタイ国ルンピニースタジアム認定ライト級王座決定戦。「日本ムエタイ界の至宝」梅野源治(PHOENIX)が、世界最高峰のムエタイのリングで驚異のKO率を誇る「KOキング」クラップダムと対戦する。梅野が勝てば日本人初のルンピニー王者誕生、しかもWBCムエタイ王座とラジャダムナンスタジアム認定王座に続く「ムエタイ世界三冠王」。これは、タイ人以外の外国人では史上初の快挙である。
このほかにも注目カードが並び、チケットは間もなく完売する人気ぶりながら、実は昨年、REBELSは旗揚げ以来の大ピンチに見舞われていたという。激動の2017年をどう乗り越えて、2018年はどんな「仕掛け」を考えているのか。日菜太、不可思、T-98(タクヤ)、小笠原瑛作らを輩出するクロスポイント吉祥寺の代表であり、REBELSを主宰する山口元気代表に聞いた。
主力選手たちがK-1やKNOCKOUT参戦。
REBELSは「選手を育て、強くなっていくストーリー」を見せる大会に原点回帰
――まず、REBELSにとって2017年はどんな年でしたか?
「前半は本当に苦しかったです。やっぱり日菜太のことがあって、その影響が色々と出てしまいました(苦笑)」
――日菜太選手は一昨年12月に突然、新生K-1への参戦を表明。それまでREBELSのメインイベンターであり、いわゆる「非K-1」の代表格だったので格闘技界が騒然としましたね。
「同時期にKNOCKOUTが旗揚げして、クロスポイント吉祥寺から不可思、小笠原瑛作、T-98(タクヤ)が参戦しました。REBELSのチャンピオンなのに、オファーをしてもなかなか出て貰えなくなった選手もいましたし、ヤスユキ選手(Dropout)の引退もあり、REBELSの主力がK-1とKNOCKOUTに行ってしまい、さあどうしましょう、という状況でした(苦笑)」
――厳しかったですね。
「ただ、それまでは『K-1MAXの続きをやりたい』という日菜太を筆頭に『もっと大きな舞台で、世間の注目を浴びる試合をしたい』と願う選手たちのために、彼らの活躍の舞台を作らなければいけないと思って、無理をしてクンルンファイトとの合同興行(16年8月7日、REBELS.45)を大田区総合体育館で開催したりしました。だけど、正直、僕らがあの規模の大会をやるのはまだ無理があったと思います。
トップ選手たちがK-1とKNOCKOUTに上がるようになり、REBELSは本来の『選手を育てて、強くしていく場』に戻ろう、と。そこで、2017年の後半は予定していたディファ有明大会をキャンセルし、後楽園ホール大会に集中することにしました。
オファーする選手も見直して『REBELSに上がりたい。REBELSのベルトを獲りたい』と思ってくれる選手に絞りました。
王座決定トーナメントやタイトルマッチに出場して、負けはしても良い試合をしてくれた選手には『もう一度チャンスを』と思って再度オファーするんですけど『もう他団体で王座決定戦が決まりました』と断られることが結構ありました(苦笑)。
ベルトが欲しい気持ちは分かりますけど、継続参戦してくれないとストーリーにならないし、ただ勝った負けたでは何も盛り上がらないです。一度負けても、またREBELSでチャンスを作ればお客さんも『復活』や『リベンジ』で感情移入できるじゃないですか。だけど、いろんな団体のタイトル決定戦に出場してると、お客さんもせっかくツイッターをフォローしたり、その選手を追うようになっても『そんなものなの?』となりますよ」
――「ホーム」を大切にして、そこの看板を背負って戦う選手は魅力がありますね。
「REBELSでその姿勢を見せてくれたのが良太郎選手(池袋BLUE DOGGYM)でしたね。
最初は目立つ存在ではなかったのが、REBELSに継続参戦してくれて、試合内容も良くなり、会場での「良太郎人気」は高くなりましたよ。最後のディファ大会、REBELS.50(4月16日)ではK-1・Krushとの対抗戦として小西拓真vs小鉄、古谷野一樹vs芦澤竜誠を組んで盛り上がりましたが、この辺りから良太郎選手がグッと存在感を増した。REBELS.51の津橋雅祥(エスジム)との試合も良くて、雷電HIROAKIの引退があり『ライト級王者決定トーナメントをやろう』と決めて、良太郎選手、津橋選手、そして大谷翔司(スクランブル渋谷)、ピラオ・サンタナ(ボスジム)と『REBELSのベルトを獲りたい!』と高いモチベーションを持つ4人を集められた。そういう選手が集まると試合は面白くなりますし、選手の思いを感じてお客さんがすごく盛り上がってくれた。ライト級は良太郎選手、スーパーライト級はスアレック選手(スタージス新宿ジム)が中心となっていい試合連発でした。
ちょうどそのタイミングで梅野(源治)選手が帰ってきて、REBELSの『柱』になってくれたので、2017年後半の大会はお客さんの満足度の高い興行が出来たのではないかと思います」
タイトル戦線活性化~2月よりスーパーフライ級王座決定リーグスタート
――2018年、REBELSはどんなストーリーを作っていきますか?
「まずタイトル戦線の活性化です。今年最初の目玉は、2月から始まるスーパーフライ級王座決定リーグ戦です。老沼隆斗(STRUGGLE)、濱田巧(teamAKATSUKI)、JIRO(創心會)、蓮沼拓矢(テッサイジム)の4選手による勝ち点制のリーグ戦です。3R制で延長なし。勝ち2点、引き分け1点、負け0点、そしてKO勝ちは3点。KO勝ちすると大きいですよ」
――王座決定トーナメントではなく、リーグ戦にした理由は何ですか?
「そもそもSTRUGGLEの鈴木会長から『老沼をREBELSに上げたい』という話があり、良太郎選手からは主宰するteamAKATSUKIの濱田巧選手を『ぜひ』と推薦されました。二人はJ-NETWORK新人王の決勝戦でやっている若手の有望株で、それならREBELSの推薦選手としてJIRO選手と蓮沼拓矢選手を加えて、これからの軽量級を背負う期待の若手4人による王座決定戦をやろうと。試合経験を積ませて育てていきたい4人なので『負けたら終わり』ではなくリーグ戦で。毎回出場しているとお客さんも覚えてくれますし、これからが楽しみな4選手なのでどんな試合を見せてくれるのか。僕自身もとても楽しみです」
――若手選手にとっては2月、4月、6月と試合が続くので気が抜けないですけど、自分の存在をアピールする絶好のチャンスですね。
「そうですね。今年のREBELSはタイトルを賭けたリーグ戦やトーナメント戦をどんどん実施していきます。2月からスーパーフライ級王座決定リーグ戦が始まり、次はウェルター級王座決定トーナメントを考えています。今のところUMA選手が中心になると思ってますけど、こういう状況はどんどん変わりますからね。他の階級の選手たちもすでにピックアップしていて、タイミングを見てスタートさせていきます」
――現状で防衛戦を実施するのが難しいタイトルホルダーについては?
「オファーしてもなかなか出て貰えなかったり、継続的に出てくれる意思がないのであればタイトルは返上して貰って、空位のタイトルを巡る新たな争いをスタートさせます。他の選手にタイトル奪取のチャンスが生まれて、昨年の良太郎選手のように下馬評を覆してベルトを巻く選手も出てくると思いますから」
――現在、他団体のリングを主戦場にしているクロスポイント吉祥寺の選手たちについてはどうですか?
「小笠原瑛作は4月の復帰を考えています。12月のKNOCKOUTの高橋亮選手との試合はドローでしたけど2度ダウンを奪われてしまった。6月のワンチャローン戦と、9月のフランク・グロス戦(REBELS.52)も勝ちましたけどダウンを喫してて攻撃を貰いすぎましたね。最近は粗さが目立ちますけど、一度しっかりと作り直して、良い試合内容を見せて55kgのトップにいるとアピールしたいですね。そして『アノ選手と瑛作が見たい!』という機運が高まるように持って行きたいですね! それがREBELSの得意な役目なのかなと思います。
不可思はKNOCKOUTのスーパーライト級トーナメントもあるし、RISEの王者として防衛戦もやっていかなければいけないでしょうね。T-98(タクヤ)は70kg自体、なかなか対戦相手がいない状況ですけど、2月にクンルンファイトで試合をさせる予定です。日菜太、不可思、瑛作、T-98はスケジュールを見ながら、年に一度はREBELSに上がって盛り上げてほしいです。
これまで『自分たちのホームはREBELS』という意識が薄かったと思うし、僕もあえてそういうことは言ってこなかったですけど、今の立場にいるのはREBELSというホームリングで経験を積んできたからです。
ですから、今度は自分たちがREBELSを盛り上げて、REBELSに上がっている若手の選手達をフックアップしていかなければいけないですよね。今年はそのことを自覚して『ホームのREBELSを盛り上げる』という意識を強く持って貰いたいと思っています」
――昨年末のRIZINでは浜本“キャット”雄大選手(クロスポイント大泉)の果敢な挑戦がありました。那須川天心選手の、まさかの「真空飛び膝蹴り」で負けてしまいましたが。
「あの飛び膝蹴りは当たらないと思ったし、避けて揉み合って2ラウンド終了だと思っていたら、見事に当てられてしまいました。キャットも、天心君が相手じゃなければもっと出来たはずで、体の強さと持ち前のフットワークで焦らして3ラウンドで一気に勝負をかける作戦でしたけど、天心君のプレッシャーがとにかくキツかった」
――効かされたのは三日月蹴りですよね?
「あれで動きを止められましたね。今年、キャットはフェザー級に上げるので、REBELSのフェザー級も活性化させていきますよ」
(*浜本キャット雄大選手は2月10日、シュートボクシング後楽園ホール大会に参戦。笠原弘希選手との次期エース対決に臨む)
常に「NO.1」を目指して攻める
2月18日は梅野源治がルンピニー王座決定戦
――キャット選手にラウェイに挑戦させたり、天心選手の対戦相手公募に応募させて天心戦を実現させたり、REBELSは常に「攻め」ですね。
「格闘技の選手なら、みんなNO.1になりたいし、最強を目指しています。もちろん、実力が全然足りない選手に『挑戦してこい』とは言わないです。でも、勝てる可能性があるならどんどん挑戦した方がいいし、戦う気持ちのある選手を止めたりはしないですよ。たとえば、僕が現役なら一度はラウェイルールをやってみたいと思っただろうし、同じ軽量級に天心君がいるなら戦いたいと思いましたよ。そういう『気持ち』のある子にはどんどん挑戦させたいですね」
――なるほど。
「マネジメントを飛び越えて、選手に直接オファーをするような明確なルール違反がなく、きちんとしたお付き合いをしてくれるところには、選手が望めばドンドン出したいと思います。昨年の中村広輝選手(赤雲會)がそのケースですよ」
――昨年12月のKrush参戦は驚きました。
「中村選手のところにある団体からオファーがあり『これだとREBELSに出られなくなってしまいます』と相談がありました。それで、彼の希望を聞いたら『K-1に出たいです』というので、K-1サイドと話をして『まずKrushに』となった。今回のKrushトーナメント(3月10日、Krush-65kg次期挑戦者決定トーナメント・準決勝)も、中村選手から『ぜひ出たいですが、しばらくREBELSに出られなくなってしまいますけど大丈夫ですか?』と相談があり、気にしないでKrushのベルトを持って凱旋してください、と送り出しました。対外試合でしっかりと実力を証明して、REBELSに帰ってきて欲しいですね」
――2月18日には、いよいよ梅野源治選手がルンピニースタジアム認定ライト級王座決定戦で「KOキング」クラップダムとの対戦ですね。
「これも『最強』への挑戦です。同じ階級に『一番強い』と言われる選手がいて、それがムエタイのトップであれば、キックボクサーなら挑戦して、勝ちたい。もちろん、それは梅野選手だから、というのはありますよ。梅野選手ほど同じ階級のムエタイのトップ選手たちと戦ってきた日本人はいないし、その彼に『次はルンピニー王座を目指したい』という強い希望があったので、僕は『協力する』と約束して昨年からREBELSに上がって貰うことになりました。タイトルマッチを日本で組むのは本当に大変なことで、正直なところ進んでやりたいとは思わないです(笑)。だけど、梅野選手だから何としてもやらせてあげたいし、プロモーターとして必ず実現させなければいけない、と思って、ずっとタイトルマッチ開催に向けて動いてきて、ルンピニージャパンのセンチャイ代表の尽力もあってようやく実現できました」
――今後も、梅野選手のように「打倒ムエタイ」の路線を歩んでいく選手はいますか?
「そうですね、打倒ムエタイという意味では僕は鈴木真治選手が、元藤原ジムとして打倒ムエタイを果たすストーリーを楽しみにしています。また、若手で期待しているのはスーパーフライ級リーグ戦に出る老沼、JIRO、蓮沼、濱田の4人です。後は新人の三浦翔。そして若手ではないですが潘隆成ですね。ただ、僕の中で梅野選手は別格な存在ですから、潘がその領域まで上がって行くにはまだ時間が掛かるでしょう」
――潘選手は見るたびに体が大きくなり、攻撃に力強さも増していて、成長していますね。
「選手が強くなるための環境作りをやってきて、潘もそうですし、小笠原瑛作や小笠原裕典らは目に見えて伸びています。『もっと強くなりたい、チャンピオンになりたい』とウチのジムに入ってくる子たちも増えていますよ。
今はクロスポイント吉祥寺がそうした選手たちが集まる場になっていますけど、スクランブル渋谷やクロスポイント大泉でも『強くなれる環境作り』をどんどん進めています。将来的には、これらのジムをREBELSに上がっている選手たちが自由に使えるフリーのジムにする事も考えていますし、他のジムから『ウチの選手をREBELSに上げたい』という話もよくいただくので、そうした選手たちで切磋琢磨して、もっともっと強い選手を生み出していきたいですね。キッズから育てて、天心君に勝てる選手や、梅野選手に続く強い選手を育てていきたいですね」
――アマチュア大会も復活するそうですね。
「4月から再開します。REBELSの地盤固めが終わったので、新しい才能を発掘していくために『アマチュアREBELS』を、パンクラスさんが大会を開催するスタジオコーストでおこないます。パンクラスのMMA、中井祐樹さんたちの柔術大会、そしてキックのアマチュアREBELSが並ぶ形になって、格闘技フェスとして盛り上がると思います。
また、RENA選手や浅倉カンナ選手たちに刺激を受けて「試合をしたい」という女子選手も多くなっているので、今年はREBELSで女子の試合を組むことも考えています。
今年のREBELSと、REBELSファイターたちの活躍にぜひ期待してください。それと、2月18日のREBELS.54は間もなくチケットが売り切れます。観戦予定の方はすぐにでもチケットを確保しておいた方がいいですよ。みんなで『歴史の瞬間』の目撃者になりましょう!!」