橋本道場対談 宮元啓介・橋本悟

インタビュー

公開日:2018/2/11

聞き手・撮影:茂田浩司

Q「橋本道場はなぜ強い選手が出てくるんですか?」
A「師範を筆頭に強い人ばかりで、鍛えられてるからです」



 2.18 REBELS.54(東京・後楽園ホール)は、メインのルンピニー王座決定戦クラップダムvs梅野源治以外にも注目カードが揃っている。中でも「橋本道場vsREBELS」は立ち技格闘技界の今後を占う重要な試合だ。激化する「55㎏」でトップ戦線浮上を賭けた「宮元啓介vs小笠原裕典」、スーパーライト級実力者が激突する「橋本悟vs潘隆成」。
 橋本道場といえば、宮元と橋本以外にも町田光、加藤竜二、安本晴翔ら強豪選手を次々と輩出しているばかりでなく「アマチュアもかなり強い子たちがいる」(REBELS山口代表)と今後も目が離せない「チャンピオンメーカー」である。
 そこで、福生市の橋本道場にお邪魔して、宮元と橋本に聞いてみた。
「なぜ、橋本道場からは次々と強い選手が出てくるんですか?」







「道場の空気に圧倒されました。怖くて(苦笑)」(宮元)



――「REBELSの取材なので」とわざわざREBELSのTシャツを着てきてくれた気遣いの人、宮元選手と、取材があるのに走りにいってしまって全然帰ってこなかったマイペースの橋本選手です(笑)。
橋本 ハハハ。自分も着替えた方がいいですか?
――いや、練習着のままでいいですよ。「魔人」っぽくて(笑)。宮元選手は元々空手でしたね。なぜ橋本道場に?
宮元 キックをやりたくて、空手の師範に相談したら橋本道場を勧められました。出稽古にも来たことがあるんですけど、先輩たちが怖くて(苦笑)。話すと優しい方ばかりなんですけど、練習の雰囲気に圧倒されました。黙々と、強くなるための練習に打ち込む空気が凄くて、自分からは話しかけられなくて『俺なんて隅っこでいいや』と(苦笑)。
橋本 僕は23歳、24歳の時に入門しました。中学は野球、高校はバスケをやってて、部活を引退した後は寸止め空手をやってたんですけど、練習は週2回とかで物足りなくてここに来た感じです。で、入って戸惑いました。誰かの紹介とかじゃなくて一人で入ったらめちゃめちゃ怖くて(苦笑)。結構、ビビりながらやってましたね。僕は元々目つきが悪いので(苦笑)、先輩たちも「変なのが入ってきたな」と思ったみたいで。
――橋本道場の「強さの秘密」は何だと思いますか?
宮元 師範が強くて、説得力があるというか。昔から強い選手が一杯いて、練習内容がヤバいです。全部キツいですけど、練習の最初にやるフィジカルで腕とか足をパンパンにして、それからスパーやミットをやるので、体は強くなりますし、スタミナもどんどん付いていきます。息を上げる練習はかなりやりますね。
橋本 師範の厳しさは大きいですね。ジムがピリっとしてて、引き締まります。
――試合会場で見てると、橋本道場はチームワークの良さを感じます。
宮元 それはありますね。仲間意識はみんなあります。練習から合同なんで「みんなで乗り切ろう!」という意識は強いです。
――スパーはガチスパーでバチバチやるんですか?
橋本 そうですね。
宮元 マスをやる時はあるんですけど、基本はガチでやります。スパーでガンガンやるんで、気持ちも体も強くなります。
橋本 やっぱりガチでやっておいた方が、土壇場での一発は出ると思いますね。マスも絶対大事だと思うんですけど、ガチもやった方がいいですね。
――スパーで怖かった先輩は?
橋本 自分は(山本)佑機さんと、加藤竜二ですね。
宮元 竜二さんは自分も(苦笑)。
橋本 自分が小さいから、思いっきりガンガンやってくるんですよ。僕はまだアマチュアの時、日本トーナメントかな、大事な試合前で、ヤツはもうチャンピオンなんですけどスパーで肋骨を痛めて。「ちょっと折れたかも」と言ったら「いや折れてない」って(苦笑)。病院に行ったらやっぱり折れてて、でも「絶対にウソだ」って認めないんですよ。
宮元 自分もアマチュアの頃は先輩にガンガン倒されて、ボディとローはかなり鍛えられました。それは今、試合で役立っていると思います。
――そうやって揉まれて、鍛えられるんですね。
宮元 そうですね。
――橋本道場といえば、橋本会長がワイシャツ姿で選手の血とか汗に構わずセコンドに付いて、選手と一緒に戦いますよね。「みんなで戦う」感じが伝わってきます。
橋本 やっぱり心強いです。
宮元 むちゃくちゃ心強いですよ。自分はインターバルでコーナーに戻って、師範の顔を見ると安心するんです。師範が近くにいてくれると「勝たなきゃ」「もっと手数出さなきゃ」とか色々と思います。
橋本 これはたまたまだとは思うんですけど、師範が愛媛に行く日に僕が東京で試合があって、その時に大怪我をしてしまったんです。そういうのはあるのかな、と。
――橋本会長は存在感が大きくて、選手からすれば「守られてる感じ」があるんでしょうね。
宮元 それはありますね。
橋本 試合に勝って、師範の笑顔を見たいですね。






「江幡戦は悔しかった。今年は全部勝ちます」(宮元)
「バチバチに打ち合って盛り上げたい。でも潘選手は判定狙いですよね?」(橋本)



――今回はREBELS勢との対抗戦ですね。小笠原選手と潘選手のいるクロスポイントは、タイ人トレーナー、ボクシング、フィジカルと練習環境の良さで有名ですけど、正直、羨ましいな、という思いはありますか?
宮元> 別に、羨ましいとかは全然思わないですね。
橋本 僕も羨ましいとは思わないですね。逆にこっちの方が気持ちは強いと思いますし。
(ここで橋本会長登場)
橋本会長 後から付けたウェイトなんて意味ねえじゃん! こっちは「これが必要だ」「あれも必要だ」って選手のために練習に加えていったんだから。後付けのウェイトは「会員さん募集」のためだよ!
宮元 と、いうことです。
――おお、対抗戦ムードが高まってきましたね。今回の対戦相手、小笠原裕典選手の印象は?
宮元 印象ですか? 背が高くて、リーチが長いな、ぐらいです。試合前に2、3回映像を見て、そこから対策を立てていきますけど。特に印象はないです。
――一度負けている小笠原瑛作選手の兄、という部分は?
宮元 全く意識してないです。ただの1選手ぐらいです。
――なるほど。今「55kg」は注目が集まっていますね。
宮元 強い選手が一杯いれば、それだけ注目が集まるのでそれはいいことだと思います。
――その分、1つの勝敗で「天国と地獄」を味わいますよね。
宮元 そうですね。自分も小笠原瑛作選手に勝っていれば、大きな舞台にずっと出られたわけですから。その分、1つも負けられないな、という気持ちですね。
――昨年12月の両国国技館での江幡塁戦を見て、宮元選手の調子がさらに上がってる印象を受けたのですが、ご自身ではいかがでしょう?
宮元 一昨年、小笠原瑛作選手に倒されてから、結構フィジカル面は強化してきたので、体の強さはまたさらに上がったかなと思います。
――江幡戦は接戦の末に1者はドローで0-2。敗れたとはいえ、終始前に出て攻めた宮元選手が評価を高めた試合でした。
宮元 やってる本人はあまり分からないですね。一生懸命だったんで、そこまで細かく試合内容は覚えてないですけど、向こうがボディを嫌がってたのは分かりましたし、自分は向こうのローは全然痛くなくて気にしなかったんで。終わった時は負けはないのかな、と思ったんですけど。
――試合後、いろんな人から「いい試合だった」とか「負けてなかった」と言われたと思うんですけど。
宮元 言われました。それを聞くとやっぱり悔しいですよね。もっと前に出たら勝てたのかな、と思ったり。だから、今年は一試合も落とせないです。決まった試合は全部勝つ、と思っています。
――橋本選手は、潘選手の研究は?
橋本 あまり対戦相手の研究はしないんですけど、先輩の田中さんがやってて、その映像がYouTubeに上がってるので何回か見ました。印象? 戦績がいいのと、顔もいいな、って(笑)。
宮元 フフフ。
橋本 背が高くて、手足も長いんで。近づけさせてくれないと思うんで。
――潘選手は「KOしたい」と言っていますね。
橋本 KOを狙ってくれるなら逆にいいですね。僕は「判定を狙って来るんだろう」と思ってるんで(苦笑)。コツコツ攻めてきて、気づいたら負けてた、みたいな試合だと相手のペース。僕はバチバチに打ち合いたいんで、本当にKOを狙ってくれるならいいですけど。
――どんどん来いよ、と。
橋本 絶対来ないと思うんですけどねぇ(笑)。絶対に離れて蹴るんでしょ、って。
宮元 そうですよね。
橋本 ただ、最近はパンチも上手くなってるんですよね?
――前回は小川翔選手からパンチでダウンを奪ってますね。
橋本 それは凄いですね。自分は盛り上げたいんで。もちろん負けるのは嫌ですけど、つまらない試合で判定負けをするぐらいなら、バチバチに打ち合って勝っても負けてもKO、がいいんですよ。
――おお!
橋本 年齢も年齢なんでそんなに長くも続けられないだろうし、どの試合が最後になるか分からないと思ってるんで。1つも落とせない気持ちで、一つ一つの試合をやっていって、大きな舞台でも戦いたいですね。
――去年よりも今年の自分の方が強い、という自信はありますか?
橋本 はい、ありますね。「落ちてきてるな」と思ったら続けられないです。
――ご家族は何と?
橋本 親は「頑張ってるから応援したいけど、早く辞めてほしい」と(苦笑)。反対っていうわけじゃないですけど、試合は一度も見に来たことはないですし「勝ったよ」と映像を持っていっても見たがらないですね。無理矢理見せる感じで。
――身内だとそうですよね……。宮元選手は3か月前にご結婚されたそうですが、奥様は?
宮元 ウチはすごい応援してくれてて、試合でも「絶対に負けちゃダメ!」と煽られるぐらいなんで(笑)。
――あと「REBELSは戦いやすい」という声をよく聞くんですけど、そういう感じはありますか?
宮元 いや、自分は特にないですね。どの団体に出ても、やりやすいとかやりにくいとかはないです。
橋本 僕は1回しかREBELSに出てないですけど「やりやすいな」と思いましたよ。グローブがすごく握りやすくて、殴りやすいんです。
宮元 ああ、そうですね。グローブはすごく使いやすいです。
橋本 演出も豪華ですし。
――では、最後に「2・18後楽園ホール」に向けて、ファンの方へメッセージを。
宮元 僕は蹴りが得意なので、今回もバンバン蹴っていきます。パンチはちょこっとですけど(笑)、今回も面白い試合をして、KOで勝つので、応援をよろしくお願いします。
橋本 自分はやっぱりパンチが好きで、細かいテクニックはないんですけど、バチバチに打ち合って会場を盛り上げるんで。
――ちなみに、山口代表は橋本選手の「絶対に下がらない試合」が大好きだそうですよ。
橋本 ホントですか!? 絶対に「もっと頭を使って戦えよ」と思われてると思ってました(笑)。橋本道場は僕以外、みんなテクニックを使えるんですけど、僕は不器用なので。
宮元 橋本道場の「魔人」ですし(笑)。
橋本 どんどん前に出て、バチバチの打ち合いを見せるので、応援をよろしくお願いします!






プロフィール
宮元啓介(みやもと・けいすけ)
所  属:橋本道場
生年月日:1992年12月16日生まれ
出  身:埼玉県
身  長:168cm
戦  績:43戦27勝(11KO)11敗5分
タイトル:元WPMF世界スーパーバンタム級王者

橋本悟(はしもと・さとる)
所  属:橋本道場
生年月日:1986年3月18日生まれ
出  身:東京都
身  長:172cm
戦  績:32戦18勝(9KO)12敗2分
タイトル:MuayThaiOpenスーパーライト級王者


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