炎出丸インタビュー
インタビュー
公開日:2020/9/25
取材・撮影 茂田浩司自分のキックボクシングの集大成を見せる戦い。
『新しい炎出丸』で、インパクトのある試合で勝つ。
10月3日(土)、新宿FACEで開催される「REBELS.66」。メインイベントに登場するのはプロ16年目を迎える炎出丸。
自身のYouTubeチャンネル「炎出丸ヒデマルチャンネル」開設し、KNOCKOUTが全面協力した映画「きみの瞳が問いかけている」に出演するなど、常に新しいことに挑戦し続ける炎出丸は、大川一貴(青春塾)との1戦に並々ならぬ決意で臨む。
横浜流星君の体力と集中力には
さすが一流だな、って。いい経験でした。
9月11日、映画「きみの瞳が問いかけている」(吉高由里子、横浜流星W主演。10月23日公開)に関する情報が解禁された。
キックボクシングイベント「KNOCKOUT」(ノックアウト)が全面協力し、キックボクシング指導は山口元気プロデューサーが担当。横浜流星演じる「塁」の対戦相手を小笠原瑛作、小笠原裕典、栗秋祥悟、炎出丸(以上クロスポイント吉祥寺)、与座優貴(橋本道場)の5選手が務め、キックボクシングシーンや格闘シーンに出演していることが発表された。
「横浜流星君と体格が近いのもあって選ばれたんですけど、僕はあまりテレビを見ないので横浜君をあまり知らなくて。出演が決まってから『すごく人気のある子なんだ』って知りました。
横浜君は、ジム(クロスポイント吉祥寺)にも練習しに来てましたし、スタジオで顔合わせしたり、撮影現場で会って、3、4回は会ってるのかな。
印象としては素直な子だな、って。可愛くて、周囲のスタッフさんからもの凄く可愛がられている感じでした」
撮影現場では「俳優・横浜流星」の凄さを実感したという。
「まず撮影現場の空気が凄かったんですよ。スタッフさんの誰かがミスると『お前、何やってんだよ!』って罵声が飛んで、格闘技界よりも体育会系だなって(笑)。あれはびっくりしましたね。
撮影時間も結構長くて、僕らクロスポイント吉祥寺の選手たちは内心『早く終わらないかなー』って思ってたんですけど(笑)。僕らは4人いるから出演シーンが終わると控え室に戻って休めるんですけど、横浜君は主演だから一人だけずっとリングの上にいて、黙々と撮影をしていくんですよ。
僕は『ハイキックを喰らってよろめく』シーンを1時間くらい撮ってて。横浜君のハイキックを受け続けるので『腕が痛いな。そろそろ終わらないかな』と思ってたんですけど、その間、横浜君はずっと集中してて、ハイキックを蹴り続けたんですよ。あの体力と集中力は凄かったです。一流だな、って思いましたね」
格闘技ジムや格闘技イベントとはまるで違う映画の撮影現場の空気に触れて、炎出丸は大いに刺激を受けたという。
「映画一本にこれだけ大勢の人が関わっているんだな、って思ったし。そう考えると格闘技イベントもいろんな人が関わって作り上げてるわけで、勉強になったし、本当に出演できてよかったです。これは人生の経験としてデカいなって思いました。それに……」
炎出丸はこう続けた。
「ここ数年、食生活を見直したり、新しいトレーニングを取り入れてきて。今は若い選手でも、コンディショニングとかケアをおろそかにして、どこかしら壊したりしてるんですけど、僕はホントにピンピンしてるので(笑)。そうやって現役を続けてきたからこそ、映画出演のチャンスを貰えたと思いますし。続けてきてよかった、と思いましたよ」
コロナの自粛期間は引退も考えた。
負けたら、そこで終わりかもしれない。
炎出丸はここ数年「REBELSの門番」として初参戦の強豪と対戦することが多く、KING強介、大野貴志、壱・センチャイジムは炎出丸に勝って、タイトル戦線に浮上していった。
現在37歳。すでに66戦をこなした。キック界全体に10代ファイターが増えており、そろそろ引退も頭をかすめる。
「特にコロナの期間はきつかったです。まったく先が見えない状況があったじゃないですか。若かったらいいんですけど、いつ試合ができるかも分からなくて『引退しようか』という考えも浮かびました。
ひたすら家にいたんで、ひたすら勉強しました。YouTubeを見漁って、いろんな人の言葉とか考え方、働き方とか。それで『行動しよう』と思って、自分でもYouTubeを始めたんです。人に伝える力は今後、生きていく中で大事じゃないですか。結果が出ないと恥ずかしいとかは考えずに、ダメだったら反省してまたやればいいし」
自身のYouTubeチャンネル「ヒデマルチャンネル」を始めて、前向きに取り組むうちに考え方も変わったという。
「キックでも『これからどうしようか? どこに向かえば?』って、今思えば中途半端で、モチベーションが上がらない時期もあったんですけど、リセットされたというか、世界観が広がりましたね。YouTubeは自分で店を構えてるみたいで、どういう商品をどうやって出すか、みたいな感覚でやってます。キック以外のことをやってみると考え方が柔らかくなって『これは自分の試合にもつながるな』って」
今回は10か月ぶりの試合。炎出丸にはずっと取り組んできたことがある。
「具体的に言うとリズムです。今まで5Rで力を発揮するタイプだったのが、だいぶ3R仕様に変えられたと思います。パンチの打ち方も変わってますね。僕と同じビジョントレーニングをしてる村田諒太選手のYouTubeを見てたら、僕がイメージしてたパンチの打ち方と違うことに気づいたんですよ。それで、真似して打ってみたらしっくりと来て。クロスポイント吉祥寺で新しく教えるようになった石塚勝久トレーナーとのミット打ちでも新しい打ち方に取り組んできて、結構変わったと思うし。やっぱり研究して、新しいことを試してみてっていうのは楽しいですよ(笑)」
だが、炎出丸はこう言い切った。
「だけど、試合は厳しいのは分かってるんで。負けて、気づくこととか得るものって多いんですけど、さすがにこの年齢で負けて気づくのはキツいんで(苦笑)。
新しいことをいろいろと取り入れてきたのも『ただ勝てばいい』じゃなくて『インパクトのある試合をして勝つため』です。試合で『新しい炎出丸』を全部出し切って、勝つ。REBELSにはランキングがないんで、その分、一発逆転のチャンスはあると思ってるんで。ベルト戦線にも絡んでいくためにも、インパクトのある試合をして勝たないと。
これからは、勝てば『その次のチャンス』が貰えるかもしれないし、負けたらそこで終わりかもしれない。自分のキックボクシングの集大成を見せていく戦いになるんで、すべて出し切りたい、という気持ちです。コロナでいろいろと大変だと思いますけど、ぜひ会場に来て応援をよろしくお願いします」