大川一貴インタビュー
インタビュー
公開日:2020/9/29
取材・撮影 茂田浩司かつての名門ジムの、現在唯一のプロ選手。
「炎出丸選手に必ず、圧倒的に勝ちます。
竹島会長や石川直生さんの期待に応えなくては」
10月3日(土)、新宿FACEで開催される「REBELS.66」。メインイベントに登場するのは、山本優弥や石川直生を輩出した名門・青春塾の看板を一人で背負う大川一貴。新空手優勝の実績を引っ提げてプロに転向しながら良い結果が残せていなかったが、今回のメイン抜擢は大きなチャンス。紆余曲折のプロ生活と、この試合に賭ける思いを語った。
人生を決める瞬間は、ある時、唐突に訪れる。
大川一貴にとっては、初めて青春塾を訪れた日がそうだった。岐阜経済大学在学中に新空手で優勝し、プロ転向を考えて様々なジムを見て回っていた時だった。
「青春塾に連絡して、待ち合わせ場所のファミリーマートにいたら山本優弥さんが迎えに来てくれてビックリして。道場では石川直生さんに『ああ、会ったことあるよね! 新空手で会ったよね!』って話しかけられて。『え、覚えてるの!?』と(笑)。僕からしたら、二人ともスーパースターですから」
大川は、学生時代に士心館に通い、元全日本キックのライト級ランカー、岩田志郎氏の指導を受けていた。
「直生さんと岩田さんが全日本キックの同期で、新空手の大会で岩田さんがセコンドに付いた僕を直生さんが覚えてくれてて。直生さんや優弥さんのセコンドをする姿を見てた竹島会長がミットを持ってて、凄い熱で『ここで練習したい!』と思って青春塾に決めたんです。あの頃はめちゃめちゃ盛り上がってましたし、僕と同じように青春塾に入りたくて上京してくる選手が何人かいました」
2011年、24歳の時にKrushでプロデビュー。
だが、思うような成績を残せず、2013年の試合を最後に3年8か月もの間、リングから遠ざかった。
「怪我が多かったんです。二十代の頃は気持ちばかりが先走って、むしゃらに練習したんですけど回復が全然追いつかなくてよく怪我してました(苦笑)。直生さんには『大川はバカだから』とよく注意されていたんですけど、もっと気をつけないといけなかったです」
プロ生活と仕事の両立も思うようにはいかなかった。
「大学を卒業してから5年間は正社員で働いていました。金曜日の夕方まで普通に働いて、夜から減量をして、土曜日に計量して、日曜日に試合をして、月曜日の朝から普通に出勤です(苦笑)。会社に上手く伝えられなかったのもありますし、今みたいにネットでの情報もないので『社員なんだから休むな』という感じで。試合前はかなりキツくて、それが本当に嫌になってしまって『正社員とプロの両立は厳しい』と思いました」
プロ生活にいったんピリオドを打ち、勤めていた会社を辞めて、大川は違う分野に飛び込んだ。
「銀座にある先物取引の投資会社に入って、営業をやりました。上司に『ただガムシャラにやるんじゃなくて、工夫しろ』と言われて、仕事をしているうちにキックとリンクしてきたんです。『こうやって工夫したら、もっとプロで頑張れたんじゃないか』と思うようになって、10か月で退職して、青春塾に戻って会長に『復帰したいです』と申し出たんです」
当時の青春塾は、長くエースとして看板を背負った石川直生が引退してプロ選手のいない状態。大川が復帰するとなれば、竹島会長はそのための練習に付き合わなければならなくなる。
「会長も、僕の練習を見るとなれば家族のこととか犠牲にしないといけないんで。『まずはお前が誠意を見せてくれ』と言われて、それから1年くらい青春塾に通って、体力や技術を戻していきました」
2017年7月にKrushで復帰して勝利。さあここからという時だったが。
「そこでまた怪我をしてしまったんです。復帰戦で勝って、連戦で行きたかったんですけど」
2018年は玖村政史、小倉尚也に連敗を喫した。
「復帰して3戦して、全然思うようにいかなくて『才能ねえな』と。何となくやってても仕方ないので、会長に『最後に試合をして、ケリを付けたいです』と話したら、会長も『分かった』と。色々と試合を組んでくれるところを探して、REBELSの山口代表に連絡して試合を組んで貰ったんです」
2019年10月の「REBELS.63×KNOCKOUT」鈴木貫太戦でREBELSに初参戦。ここから大川のプロ人生は変わっていく。
「『これでやっと辞められる』と思ったんですけど、試合中は終始パニクってました(苦笑)。マットは滑るし、ヒジヒザありのルールが初めてで、やりたいことが何も出来なくて。会長にも『あんなんじゃ辞められないだろ』と言われて、すぐに練習を再開したんです」
その矢先、大川のもとに驚きのオファーが届く。「2月11日、大田区総合体育館でのKNOCKOUTに出てほしい」というのだ。
「会長は最初『大川じゃ無理ですよ』と断ったんですけど、山口代表に『ぜひ出てほしい』と言われたそうです。会長は熱い人なので『あんなに言ってくれるんだから、頑張らないとダメだぞ』と。
僕も、自分の格闘技人生で、この戦績で、あんなに大きな会場で試合が出来ると思ってなかったですし、会長も気合いが入って作戦を立ててくれて。試合は、会長も僕も『作戦通りにいった。勝ったな』と思ったんですけど負けでした(森岡悠樹に0-3の判定負け)。悔しくて、すぐ練習を再開したらコロナが始まってしまって」
試合が出来るメドは立たなかったが、コツコツと練習を続けるうちにさらなるチャンスが巡ってきた。
今回の「REBELS.66」で、大川は格闘技人生初の「メインイベント出場」を果たすのだ。
「山口代表から『宣伝に使ってください』って大会ポスターの画像が送られてきた時は、画像を見て『どういうことだ?』と(笑)。メインイベントになると知らなくて、状況把握にしばらく時間が掛かりました。
会長からは『お前がメインイベントを出来るなんて』『お前は変わらないといけないぞ』と檄を飛ばされています。熱い男なんで、練習でも気持ちを入れてくれるので、その気持ちに応えないといけないと思ってます。ここまで結果が出せてないのに、チャンスをくださった山口代表の期待にも応えたいです。
炎出丸選手は66戦もして、リスペクトすべき選手ですけど、すべてを奪うつもりでいきます。前に出てくる選手ですし、僕も打ち合いがしたいので、熱い、盛り上がる試合がしたいです。
練習してきたことを出し切る試合をして、炎出丸選手に必ず勝つ。圧倒的に勝ちます。見てる方もコロナでストレスが溜まってると思うんで、スッキリするような試合をしますので、ぜひ応援をよろしくお願いします」